JanJan 2006年7月20日付

『教育基本法「改正」のここが問題』をおすすめします


 「愛国心」を強調する人々は、戦前の日本人にどれだけの愛国心があったと
思っているのだろうか。

 「鬼畜米英」といっていた人々も、進駐軍に対してどれだけの抵抗もせずに、
あっさりとアメリカにひれ伏してしまったではないのか。もちろん、抵抗して
ゲリラ戦のようなことをしたほうがよかったなぞと言いたいのではないが。

 さて本書「愛国者を育てない愛国心教育」と題する対談で高橋哲哉氏は「特
に指摘しておきたいのは、押しつけられた愛国心では、いざというときに役に
立たないということ、高い評価を得るために建前として身につけた愛国心は、
本質的には脆弱なものです。仮に、もし日本が侵略されて支配されることがあっ
た場合、上から押しつけられることを易々と受け入れる国民であったら、新し
い権力者にすぐなびく。戦前の日本だって、あれだけ徹底的に愛国心を植え付
けたのに、戦争に負けたら一夜にしてマッカーサーが天皇の代わりになり、マッ
カーサーを賛美する手紙がたくさん送られたわけでしょう。そんなことがなぜ
可能だったのか。やはり上から押しつけた建前の愛国心だったからじゃないか
と思います」と指摘している。

 愛国心を強調したがる人々のように、ずっと日本は偉かった、というような
むなしいことを言うのではなく、過ちを認め、その過ちをどうしたら繰り返さ
ないで済むのか、ということを明確に示してこそ、その国に住んでいる民とし
て誇りをもって行動できる、ということではなかろうか。

 対談の中で高橋哲哉氏は「政治家がなすべきことは、子どもたちが自ずと愛
着を持てるような、誇りの持てるような国にすることでしょう。」と指摘する
が、同感である。 このブックレットは、「第1章 与党案・民主党案のこれ
だけの問題点」(高嶋伸欣)「第2章 愛国者を育てない愛国心教育」(高橋
哲哉×佐高信)「第3章 教育基本法「見直し」が急がれる背景」(俵義文)
からなっている。

 第1章は、二つの「案」について逐条でその問題点を指摘する。第2章は、
「愛国心」について核心に触れた対談で分かり易い。第3章では、「なぜ今教
育基本法「改正」なのか」が分析される。

 いま、教基法「改正」から日本国憲法「改正」に向かう日本の政治の流れを
知る入り口として、タイムリーで最適の書の一つである。

(中野生弥)