『朝日新聞』2006年7月12日付

国際特許5年でわずか1件 文科省の事業、不発か


 世界的なIT(情報技術)ベンチャーが生まれる米国シリコンバレーになら
い、国際的に通用する画期的技術を生み出そう――そんな触れ込みで文部科学
省が始めた事業が苦戦している。開始から5年間で取得できた国際特許はわず
か1件。事業には国費が年間100億円つぎこまれており、財務省は「国際競
争の観点から厳格な事業評価を」と求めている。

 この事業は02年度に始まった「知的クラスター創成事業」。信州大を中心
とする超微細素子開発の長野・上田(長野県)や、理化学研究所を中心とする
先端医療技術の神戸など、18地域が年間各5億円の助成を受けている。

 今年度で助成が終わる11地域について財務省が成果を調べたところ、国内
の特許出願は最も多い地域で155件、地域あたり平均83件あったが、国際
特許は出願自体平均14件と少なく、取得は浜松ホトニクスなどが光技術開発
を進める浜松地域の1件のみ。文科省によると、18地域全体でも国際特許取
得はこれだけで、国際競争力に疑問符がつく形となった。

 財務省の指摘に対し、文科省基盤政策課は「革新的な技術は一朝一夕に生ま
れるものではないし、特許は出願から取得まで時間がかかる」と反論している。

 特許庁によると、特許出願から取得まで、国内特許は平均32カ月かかり、
国際特許は米国が同28カ月、欧州が同41カ月かかる。