『河北新報』2006年7月16日付

女性科学者どしどし 東北大が支援・育成事業始動


 科学に携わる女性を本格的に支援します―。東北大は今月、同大の自然科学
系の学部・研究所などに所属する女性教職員に育児・介護休暇を取りやすくし
たり、理系志望の高校生を開拓したりする「杜の都女性科学者ハードリング支
援事業」を始動させた。現役組をサポートすると同時に、未来の女性科学者を
育てる“2面作戦”で、女性科学者のすそ野を広げたい考えだ。

 同大は、女性科学者の底辺が拡大しない理由として、教職員の場合は出産・
育児や介護に対する支援環境の欠如、中高生の場合は身近なモデルの不足が障
害になっていると分析している。

 対策として、育児や介護には、休暇中の実験、講義を肩代わりする補充人員
制度を設けた。従来の休暇制度は代役の確保まで対応していないため、研究の
継続性という問題だけでなく、周囲への遠慮で利用しないケースが多かったと
いう。

 新制度の対象は、育児中の自然科学系教員と技術系職員。利用者に応じて補
充要員を手当てする。本年度は今月末まで希望を募り、9月をめどにスタート
させる。希望者が多い場合はニーズの高さなどを基に判断する。

 学会などの短期出張に気兼ねなく参加できるよう、ベビーシッター利用料の
補助制度も新設。医学部や大学病院の教職員らに利用を限定している病院内の
保育施設についても、受け入れ拡大などを今後検討する。

 一方、女性科学者の育成面では、自然科学系の女子大学院生が「サイエンス
エンジェル」として、理系に関心のある後輩に女性科学者のモデル的イメージ
を伝える。28日に高校生向けのセミナーを初めて開くほか、母校での出前授
業も計画している。

 2005年度、東北大の教員約2700人のうち女性は7.7%。国立大の
平均(11.1%)を下回り、教員の8割以上を占める理系への進出の遅れが
影響している。

 プロジェクトは文部科学省の女性研究者支援モデル育成事業として、08年
度までは国の助成を受ける。担当する小谷元子大学院理学研究科教授は「科学
を志す女性が、あきらめずに済む環境が大事。3年間でより良い制度を考え、
継続的な取り組みにしたい」と話している。