『読売新聞』2006年7月12日付

国立大「使える英語」 TOEIC、TOEFLで単位認定


 国際的な舞台で活躍できる人材を育成しようと、「TOEIC」や「TOE
FL」などの検定試験を、授業などに活用する国立大学法人が増えている。

 東北大学が2003年度から始めた「実践英語2」は、法学部など文系4学
部の2年生の必修授業だ。学生が能力に応じた教材をパソコンの中から選択し、
聞き取りなどを自学自習する。さらに学生が12月に受験するTOEICやT
OEFLの点数で単位認定するという独特の方式だ。

 狙いは「シェークスピア作品を読むような従来型の大学の英語教育に風穴を
開け、英語でのコミュニケーション能力を強化すること」(坂本尚夫副学長)。

 担当の浅川照夫・国際文化研究科長は「外部検定試験の利用で、学生は自分
の英語力が社会の中でどのレベルにあるのかがわかり、英語を学習する動機づ
けにもなる」と話す。

 同大では大学院(工学研究科)入試にも外部検定の活用を広げている。

 材料科学系3専攻は昨年から英語テストをやめ、TOEICやTOEFLの
点数で評価する方式に変わった。機械系5専攻も今年追随した。入試での利用
を決めた清野慧(きよのさとし)・前機械系長は「国際会議で研究成果の発表
や応答が英語でできるよう、この段階から英語のコミュニケーション能力を高
めてもらいたい」と話す。

 広島大学では03年度から、学生たちの英語の学力の伸び具合を評価するた
め、全学部生に毎年、TOEICを受験させている。同大が取り組む「到達目
標型教育」の一環で、4年間で身につけるべき知識などの到達目標を入学時点
で明確にし、各学年・学期ごとに到達度を定量的に評価していく仕組みだ。

 同大は英語の到達目標を、TOEICで600点(通常会話であれば要点を
理解し、応答にも支障ないレベル)と設定。学生らが卒業時にこの目標に到達
するよう英語を指導する。

 同大外国語教育研究センターの前田啓朗(ひろあき)助教授は「TOEIC
は学生の評価にとどまらず、どれくらいの学生が目標に到達するかで、指導す
る側の良かった点、悪かった点のチェックにも使える」と話す。

 TOEICを運営する財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会(東京)
によると、TOEICを授業の単位認定に活用する大学は私大が圧倒的に多い。

 だが03年度に41校だった国公立大での活用校が、05年度には74校と、
2年で1・8倍に急伸。同協会では「国立大の独立法人化で、特色ある教育が
求められるようになったためではないか」と分析している。(吉田昌史)