『高知新聞』2006年7月11日付


共学めぐり対立 女子大と県


 県立大改革をめぐって高知女子大と県が真っ向から対立している。例えば改
革の根幹を占める共学化について、県は県立大改革検討委の提言をベースに3
年後をめどに実施の構え。対する女子大側は「将来の法人化の際に考える」と
拒否に近いスタンスを見せている。また女子大側が口にする法人化は、県の方
が「今は検討していない」とぴしゃり。県は県議会9月定例会までに共学化を
盛り込んだ基本計画をつくる意向だが、着地点は見えない。

 「高知女子大の名前や歴史は法人化された際、受験生を引き付ける大きな武
器」「大学院は既に2割が男子学生。共学の実質化は行っている」

 今月初旬、高知市永国寺町の高知女子大学長室。青山英康学長はいすから身
を乗り出して一気にしゃべった。

 「法人化」「実質化」という言葉は何度も繰り返された。この2つの言葉に、
共学化問題の鍵が隠れている。

 「女子大で」2割

 共学化の賛否について県は15年の2、3月に高校生、保護者、一般県民各
1000人を対象にアンケートを実施している。

 結果、共学化に賛成は高校生の32%、保護者の49%、県民の58%。
「女子大のままがいい」は高校生9%、保護者12%、県民19%だった。そ
れが検討委の共学化提言のベースになった。

 その後、県は県内計14高校の進路担当教員に聞き取りし、「ほとんどの先
生から共学化賛成の意見を聞いた」(私学・大学支援課)と言う。

 また、この6月には県高校PTA連合会が共学化の要望書を橋本大二郎知事
に提出している。

 これらの声を背景に、県は「男子に門戸を閉ざし続けることは県立大として
問題」と明言、学部再編と合わせて女子大を共学化する方針を決めている。同
課によると、その時期は3年後の「21年度」。

 勝手な思い込み

 県はこれまで女子大側から「共学の実質化」という説明を受けていた。「優
れた男子学生を積極的に受け入れ、男子が定員の半分を占めれば学生や同窓会
も改称を受け入れる」(同課)という説明だったという。

 つまり、名称は「高知女子大」のまま学部に男子を入学させて共学を実質化
させる。その後で大学名を変え完全共学化――との認識だった。

 ところが今年6月末、「実質化」の時期をただした県に対し、女子大側は
「現在でも大学院は共学化、単位互換で学部に男子学生も受け入れているので
実質化している。学部への男子入学は法人化する際に検討する」と回答したと
いう。

 つまり女子大の見解は「実質化は済んだ」「法人化まで共学化は行わない」。
これに県は驚き、あきれた。「『えっ、そんなこと初めて聞く』という感想。
ただただ驚いた」と同課は振り返る。

 驚く県に対し、同学長は「それは県の勝手な思い込み」と突き放す。「大学
院、単位互換で実質化しているという主張は以前から同じ。今、学部に男子を
受け入れることは考えられない」。公立女子大は高知を含めて3大学しかない
ため、女子大の“希少価値”が出てくるとも強調する。

 16年10月に県立大学改革検討委が共学化を提言して2年近く、双方は断
続的に話し合いを続けてきた。今は基本計画をまとめる最終段階なのだが…。
ここに来て、入り口に立ち戻らなければならないような認識の違いが露見した
ことになる。

 検討の動きなし

 認識の違いは共学化だけではない。青山学長が強調する法人化にも同様のこ
とが言える。

 公立大の法人化は、国立大が法人化された16年4月に制度化された。利点
として、設置者である自治体からの制約が緩み、弾力的な運営が可能となる点
がある。全国の公立76大学中、今春までに22大学が法人化し、来春は10
大学ほどが加わる予定。

 こうした流れから、青山学長は「法人化は不可避」とする。

 これに対し県は、「高知女子大の予算規模で法人化してもスケールメリット
はない。今は検討の動き自体がない」(同課)。あくまで県立大として再編す
る計画だ。

 県民意思と「提言」をベースにした県の論理。「提言には縛られない」とし
て独自の生き残り策を模索する大学の論理。将来の県立大の姿はまだぼやけて
いる。

 県立大改革 知事の諮問機関「県立大学改革検討委員会」(大崎仁委員長、
12人)が16年10月、提言を発表。県はこの提言をベースに計画を進めて
いる。提言には高知女子大共学化のほか社会科学系学部新設に伴う高知短大廃
止を盛り込んだ。検討委メンバーには女子大の青山英康学長、同大教授も入っ
ている。県が示した学部再編案は、健康栄養(仮称)、社会福祉、看護、文化
に社会科学系の法務総合(同)を入れた5学部。女子大案は薬学科のある健康
人間(同)と文化、社会福祉、看護の4学部。