『日刊工業新聞』2006年7月7日付 文科省、知財の国際展開を後押し−大学を選別・育成 文部科学省は07年度から、大学の産学連携と知的財産活用の国際展開を後 押しする新事業を始める方針を固めた。外国企業との共同研究実施や外国特許 出願に関し、各大学の考えをまとめた「国際的な産学官連携ポリシー」(仮称) を策定、これに基づき英語での交渉・契約や技術成果の紹介ができる人材を育 成したり、外為法などの法令順守を徹底したりする。 国際的に活躍する大学を 選別・育成していくのが狙いで、1件数千万円で10大学程度を選定する予定 だ。 外国との産学連携では外国語による企業コーディネート、交渉・契約や共同 契約書の英訳、研究成果の紹介などが必要だ。 これらの人材育成のほか、「兵 器開発への応用が可能な劇物や装置、材料は輸出入に経済産業省大臣許可が必 要」といった法令順守や、外国企業が求める厳格な研究スケジュール管理など を大学の知財本部が手がけるのを新事業は支援する。 一方、大学の発明の外国出願は費用がかかるため、科学技術振興機構(JS T)の「海外特許出願支援(06年度予算は21億円)」の活用が急増し累計 1300件になっている。 しかし、JSTに頼らず技術移転相手の外国企業を 見つける大学もあり、今後は出願前調査や特許選別などができる大学を支援し ていく。 大学の知の国際活用は、政府の総合科学技術会議(議長・小泉純一郎首相) や知的財産戦略本部(本部長・同)が強調しており、研究者のニーズも小さく ない。 しかし、大学内での位置づけや制度がないため、現状では産学共同研究 のうち外国企業と組むケースは1%以下。 「他国の産業育成になるのではないか」という意見もあるが、日本の中小企 業と海外企業の仲介役を大学が果たしたり、外国の優れた研究者をひきつけた り、日本にプラスになると文科省は見ている。 文科省の知的財産本部事業は07年度に終了し、その後は地場企業向け、大 手企業対象など採択大学の活動は分化していくと見られる。 これに対し、新事 業は一足先に、国際的活躍が可能な大学を選別・育成していく狙いがある。 |