『東京新聞』2006年7月6日付

教基法特別委 5月24日の会議録
1カ月以上公開に“待った”


 与野党が提出した教育基本法改正案を審議する衆議院の「教育基本法に関す
る特別委員会」の五月二十四日の会議録が四十日以上作成されない異常事態が
続いていることが、分かった。インターネットでも、六月十五日までの同特別
委会議録はほかはすべて公開されているのに、一日分だけ閲覧できない。この
日は教育基本法をめぐる本格審議が始まり、小泉純一郎首相が出席。「愛国心」
の評価などをめぐり質疑があったが、一般の人が正確な発言を確認しようにも
できない状態だ。

 国会会議録は通常、数日で作成・公開され、四十日以上も公開されないのは
極めて異例だ。

 同特別委の会議録が作成・公開されないのは、教育基本法改正案が審議入り
した五月十六日の本会議での民主党・鳩山由紀夫幹事長の発言の削除をめぐり、
与党と民主党が対立しているため。

 鳩山氏は「密室の中で自民党が主張する愛国心と公明党が主張する宗教教育
の中身をバーターするという、もってのほかのことを行っている」と発言した。
これに公明党が「事実に反する」と削除を要求。衆院議院運営委員会が会議録
の公開を止めた。自民・公明両党と民主党で再三、協議が行われたが折り合い
がつかず、現在、衆院議長預かりとなっている。

 二十四日の特別委では公明党の池坊保子議員が「バーターしたというがその
ような事実はまったくない」と、鳩山発言に言及。本会議と連動する形で会議
録の公開が止められたという。

 特別委の会議録をめぐる調整は七日に行われる予定。池坊氏は「政治家は発
言に責任を持つべきだ。削除されたことで発言が無かったかのようになるのは
おかしい」と話し、本会議をめぐる党の方針とは一線を画している。

 会議録の作成を担当する衆院記録部の担当者は「今回の特別委は注目度が高
いので、全員体制で会議録を作成した。ほかの日は二、三日で公開できたが、
各党間で処理が終わっていないためゴーサインが出ない。通常は、どんなに遅
れても会期末までには公開するのだが…」と話している。

■削除でなく反論を

 教育基本法に詳しい西原博史・早稲田大教授(憲法学)の話 国会審議の在
り方からすると、そこでの議論は国民に速やかに明らかにすべきだ。会議録は
記録であり、よほどのこと以外は削除すべきではない。三年間にわたる与党協
議が公開されておらず、密室協議で立法過程の説明責任が果たされていないと
いう批判は事実だ。発言の削除を求めるのではなく、明らかにすることで反論
すべきだ。