『毎日新聞』2006年7月5日付

東大と東証:大学発ベンチャーの上場トラブル防止で協力


 東京大と東京証券取引所は5日、大学発ベンチャーの上場に伴うトラブルを
未然に防ぐルール作りに共同で取り組むと発表した。

 大学発ベンチャーは、大学での発明などを社会に還元するために設立され、
教員が経営にかかわる場合が多い。04年の国立大学法人化以降は、特許権を
大学が所有し、ベンチャーに特許使用の権利を供与し、その使用料を株式で受
け取る方式が一般的だ。

 ベンチャーが成功して上場すれば、大学は巨額の含み益を手にするが、イン
サイダー取引の懸念や、ベンチャーの利益と大学での本業が相反することも予
想される。「大学発ベンチャーはうまくいかないと言われてきたが、急成長す
る企業が出る可能性もある」(東大産学連携本部)と、東証との共同研究を決
めた。

 計画では、上場に伴って大学、ベンチャー双方が負うべき責任を整理し、来
年3月末までにルールを決める。

 東証の西室泰三社長は同日の会見で「ライブドアや村上ファンドのように、
新興企業が市場の信頼を揺るがす事態も起きているが、ベンチャーの成長は日
本の豊かさにつながる。そのためにも企業統治と説明責任が必要だ」と語った。
【元村有希子】