『山梨日日新聞』2006年7月3日付

山梨大が学外研究費獲得に"報奨金"
国の交付金減少で財源確保策導入


 山梨大(貫井英明学長)は本年度から、企業などとの共同研究で外部資金を
調達した研究者に“報奨金”を支給する制度を導入した。同大によると、こう
した取り組みは全国の大学で初めて。国立大学の法人化に伴い、国からの交付
金が年々減らされる中で、運営の安定化のためには外部から資金をどのくらい
集められるかがポイント。貢献した研究者の労に報いることで、共同研究への
活動を奨励する狙いがある。初年度の対象は三十五人で、調達した資金に応じ
て一定の範囲で勤勉手当として支給している。

 導入したのは外部資金獲得特別評価制度。法人化に伴う大学裁量の拡大を受
けて「研究者の大学に対する貢献に少しでも報いたい」(貫井学長)と、一年
ほど前から検討を重ねて導入を決めた。

 外部資金調達は、同大の教授らが企業や自治体とともに商品開発や地域産業
の再生などを目的とした共同研究に取り組む場合、研究費などを企業や自治体
から提供を受けるもの。調達した資金のうち5−7・5%は「間接経費」とし
て大学に納付され、運営費に繰り入れられている。

 評価制度では、納めた間接経費の金額に応じ研究者の給与規定を考慮して手
当の支給基準を作った。総支給額は大学全体の勤勉手当の総額の0・5%以下
の範囲内で、計二百万円前後という。

 評価は前年度の実績で行い、本年度は間接経費を納めた百六人のうち、クリー
ンエネルギー関連の研究など三十五人が条件を満たした。六月末に一人当たり
数万円から十数万円を支給した。

 国立大の運営は法人化により厳しい環境にある。山梨大は○四年度から国立
大学法人となり、予算面などで大学裁量が拡大する一方、国からの運営費交付
金が毎年1%(七千−七千五百万円)ずつ減額されるため、自主財源の確保策
として外部資金調達が課題となっている。

 一方で、外部資金調達は研究開発などが多い工学・医学部系に有利とされ、
「教育人間科学部系は企業との連携においては資金調達の機会が限られる」
(大学関係者)という実情もある。そのため、評価制度運用に当たっては、学
部間の格差をどうするかなどが今後の検討課題となりそうだ。

 貫井学長は「給与規定との兼ね合いがあり、多額とはいかないが、(制度導
入で)研究者に運営面に目を向けてもらう契機とすることで厳しい時代を乗り
切っていきたい」と話している。

 外部資金調達の評価制度について、文部科学省科学技術政策局調査調整課は
「競争的資金獲得をめぐり各大学が工夫している中でも珍しい取り組み。独自
の運営施策を大いに進めてほしい」としている。