『毎日新聞』広島版 2006年6月17日付

教育基本法改正:広大教授「学習指導要改訂に恐怖」−−改正を問うシンポ /広島


 国会で審議されている教育基本法改定案について議論しようと、シンポジウ
ム「『教育基本法改正』を問う」がこのほど、東広島市鏡山1の広島大であり、
同大教育学部の難波博孝教授らが講演した。【吉川雄策】

 ◇中教審運営の問題点を指摘

 同大の学生で作る実行委員会の主催。難波教授は「(同改定案は)03年3
月に文部科学相の諮問機関の中央教育審議会が行った答申が反映されている。
同審議会は今年度末までに、学習指導要領の全面改訂について答申を行う予定
で大変恐怖を感じる。同審議会は、会長と副会長が実質的にすべてを決めてい
る点に問題があり、文部科学省のホームページで公開されている議事録を見れ
ばよく分かる」と述べた。

 同法案に「我が国と郷土を愛する態度を養う」との文言が盛り込まれたこと
に関連し、県内の公立学校で君が代斉唱時に起立しなかった教職員が県教委に
処分されている問題にも触れ、「起立している人を邪魔してはいけないのと同
様、起立しない人を邪魔してもいけない。多様性を認めることが大切だ」と話
した。

 同シンポには、君が代斉唱時に起立しなかったため処分を受けた公立学校の
2教諭も参加。女性教諭は「県教委は、憲法が思想信条の自由を保障している
ため、単に君が代を歌わないだけでは処分が出来ないと分かっており、あえて
処分をするために『上司の命令に背いた』との形を作っている。周囲には『処
分されるのになぜ反対するのか』と言う人もいるが、処分することもおかしい
と思い、反対している」と訴えた。

 また、先月24日〜今月1日に同大の教育学部や法学部などの1年生222
人に、広島県と東京都で公立学校の卒・入学式で君が代斉唱時に起立しなかっ
た教職員を教育委員会が処分したことの是非についてアンケート結果を発表。
結果は、「賛成」31人▽「反対」126人▽「どちらでもない」60人▽無
回答5人だった。賛成意見には「教員は率先垂範しないといけない」「歌わな
くてもいいから立つべき」などの意見がある一方、反対意見では「様々な人間
がいることを子どもにも教えるべき」「愛国心は国から強制されて身に付ける
ものでない」などの意見があったという。