『中国新聞』2006年6月16日付

大学発ベンチャーに資金や人材難


 中国地方の大学発ベンチャー企業は百社を超えたものの、研究開発や事業化
に向けた資金や人材の不足に悩む企業が目立つことが、中国経済産業局の調査
で分かった。調査は、実態を把握するため同経産局として初めて実施。「起業
時だけでなく成長段階での課題に応じた支援が必要」としている。(永井友浩)

 中国経産局も加盟する産学官共同組織「中国地域産学官コラボレーション会
議」によると、中国地方の大学の卒業生や教員らが設立、または大学の技術を
生かし創業した大学発ベンチャー企業は、二〇〇五年三月末時点で百一社。調
査は昨年十〜十二月、その後の設立企業を加えた計百七社にアンケートし、四
十八社(44・9%)が回答した。

 事業の段階について、40%の十九社が「主力製品やサービスを販売中」と
した一方、「試作品が完成、サンプル出荷段階」が十三社、「研究中、開発中」
が十三社と製品の販売まで至っていない企業は過半数の54%に達した。

 今後の製品化、サービス開始見込みは、一年以内が九社、一〜三年以内が七
社、三〜五年以内が一社だった。

 直近決算期の経常損益でみると、三分の一近くの十三社が赤字。現在の資金
確保状況も「十分には確保できていない」46%、「きわめて不足」10%と
六割近くが資金難を訴えた。

 現時点の事業展開で最も大きな問題については、「研究開発資金の確保」
(五社)が最も多く、「研究者・技術者の確保」(四社)などが続く。将来的
な問題では「企業との事業連携」(七社)が最多だった。

 経産局は聞き取り調査も実施した。その結果、資金助成のほかインキュベー
ション施設の弾力的運用▽人材育成や人材確保▽市場調査・販路開拓調査への
助成、情報提供―などの支援が必要と分析。「企業に助成制度などの情報を提
供するとともに、事業化マニュアルを作成して今後の指針にしたい」としてい
る。

 回答した四十八社のうち、関連する大学別(一部複数回答)では広島大が十
三社で最多、山口大が六社、岡山大四社などの順だった。