『京都新聞』2006年6月16日付

京大、若手登用へ新制度
5年目評価 准教授に


 京都大は15日までに、新領域の研究を開拓する若手研究者を登用する新た
な人事制度を本年度から実施することを決めた。教室に所属せず研究に専念す
る助教(助手)を国際公募して研究資金を支給、5年後には一定数を准教授
(助教授)に採用する。独創的な若手研究者の確保とともに、オープンで公平
な競争を行うことで、硬直化しがちな人事の改革につなげる。

 米国では、博士号を取得した若手研究者に独立した研究環境を一定期間提供
し、業績を評価した上で在職資格を与える制度「テニュアトラック」を実施し
ており、京大もこれを参考に実施する。

 30歳前後の若手研究者を対象に国際公募で助教(任期制)を選び、100
0万円程度の初期資金と年間1000万円程度の研究資金を提供する。教室か
らは独立し、学生の教育も免除する。3年目の研究評価で一部に研究加速資金
を追加、5年目の最終評価で半数以上を准教授として研究科や研究所などが採
用する。評価は学外委員も交えて行い、透明性を確保する。

 研究者の公募や研究支援、評価を行う総長直属の組織「次世代開拓研究イン
キュベーションセンター(仮称)」を7月にも設立する。本年度は「生存基盤
科学の創生」「光理工学の追究」の二テーマで計12人を年内に採用。宇治キャ
ンパス(宇治市)、桂キャンパス(京都市西京区)に研究室を設ける。来年度
以降も医学・生命科学分野などでの実施を検討する。

 文部科学省「若手研究者の自立的環境整備促進プログラム」にこのほど、大
阪大など8大学とともに採択された。年間3億円の助成を5年間受ける。

 担当の時任宣博・化学研究所教授は「優秀な研究者が、研究室で助教授にな
る順番を待ち続ける現在の状況を変えたい。新領域の創造に挑戦する若手を迎
え入れたい」と話している。