『河北新報』2006年6月15日付

株式会社立大学白紙に 資金調達進まず 大郷


 宮城県大郷町に計画されていた環境リサイクル関連の株式会社立大学「日本
新環境・エネルギー科学大学」の設置が中止になったことが14日、分かった。
ベンチャー企業「還元溶融技術研究所」(高知県、久米正一社長)が資金難を
理由に計画を白紙に戻し、町内の川内流通工業団地に予定していた研究施設の
建設も取りやめた。町は構造改革特区の認可を得て受け入れ準備を進め、町活
性化の起爆剤として期待していただけに落胆が大きい。

 大学は4年制単科大で、次世代エネルギーの研究開発を担う人材を育てる方
針だった。高知県北川村など全国4カ所に分散設置し、定員は一学年100人、
「大郷校」は25人。東北大教授らを兼任で教授陣に迎える予定だった。

 大郷町は北川村と共同で株式会社立大学を開設するための構造改革特区申請
を出し、昨年3月に認可を受けた。還元溶融技術研究所は大学設置許可申請を
文部科学省に出したが、キャンパス予定地が2カ所しか決まっていなかったこ
とから審議が進まず、開学時期が今春から来年春以降にずれ込んでいた。

 町は今年に入り研究所から資金調達が進まない現状を説明され、計画の実行
は困難と判断、計画撤回を受け入れて対応策の検討に入った。

 併せて、ごみを超高温で溶融し、生じた水素や一酸化炭素を資源エネルギー
として回収する「ミニ高炉」を使った研究施設建設も中止された。

 町は「将来を見据えた計画だと認識していたが残念。会社の資金的なことな
ので町としてはどうしようもない。同様の事業を行う企業が現れてくれればい
いが、現実は厳しい。特区については国と相談しなければいけないだろう」
(企画調整課)と肩を落とす。

 還元溶融技術研究所は「担当者が出張中でコメントできない」と話している。