TBSニュース 2006年6月14日付

「愛国心」継続審議に、通知表問題は?


 愛国心が国会論議の焦点となった教育基本法の改正案は継続審議で次の国会
へと先送りとなりますが、改正されれば教育の現場に大きな影響を与えかねな
い問題点が審議を通じて浮かび上がっています。

 「我が国と郷土を愛する態度を養う」、政府案では教育の目標の一つがこう
規定されています。しかし、福岡市内の小学校では「国を愛する心」が3段階
で評価されていたと共産党は追及しました。「こころ」が評価の対象となり、
内心の自由が侵されるというのです。

 「小学生に対して愛国心があるかどうか、私はそんな評価なんか必要ないと
思いますね」(小泉首相)

 実は現在の学習指導要領でもすでに教育目標として「国を愛する心を育てる」
ことが掲げられ、埼玉県では多くの公立小学校の通知票に「愛国心」の評価項
目が設けられていたことも明らかになりました。

 「あくまでも相対的な評価をしていただきたい。その項目の中で内心的な評
価をしないでいただきたい。こういうことを申し上げることになると思います」
(小坂憲次文科相)

 「政府側が内心の評価をいくら否定してもそれが法律になれば一人歩きして
しまう」、野党側は国旗・国歌法の例を挙げて、結果的に強制されることへの
懸念を示します。

 「人それぞれの考え方がある。人によって式典等において、起立する自由も
あれば、起立しない自由もあろうと。また、斉唱する自由もあれば、斉唱しな
い自由もあろうかと。(国旗・国歌の)法制化はそれを画一的にしようという
わけではございません」(野中広務官房長官【99年7月21日】)

 当時のこの政府答弁を生徒に紹介した教師が教育委員会から厳重に注意され
たと野党側は追及しました。

 「教師という指導的立場にある人が『君たちは内心の自由があるから歌を歌
わなくてもいいんだよ』という言い方はやはり逆の指導をしていると取られて
もやむを得ない場合があるのではないでしょうか」(小坂文科相)

 野党では共産・社民両党が改正そのものに反対するに対し、民主党は情報化
社会に対応した教育などを打ち出した対案を提出します。しかし、小泉総理は
最後まで積極的な姿勢を見せませんでした。議会での低調な審議の一方、国会
周辺では連日、市民団体による抗議行動が続きます。

 「教育基本法は教育関連の様々な法律の基本的な根本法というか準拠枠になっ
ている法律ですから、それをこの程度の議論で変えるということが本当にいい
のか」(藤田英典 国際基督教大教授)

 当初は今の国会での成立を期待すると述べた小泉総理ですが、結局最後は投
げやりを隠そうともしませんでした。

 「次の総理、総裁がこれを成立させることによって、与野党共通の国家の基
本問題についての認識ができればよし。成立すれば、実績にもなる」(小泉首
相)