『日本経済新聞』2006年6月12日付

京大、ノーベル賞有力候補の阪大教授引き抜きへ


 ノーベル賞の有力候補である大阪大学教授を京都大学がスカウトに乗り出し
た。大阪大も引き留めようと躍起になっている。法人化で研究成果を競う国立
大学だが、第一線で活躍する著名教授を引き抜くのは異例だ。

 動静が注目されているのは、大阪大微生物病研究所の審良(あきら)静男教
授(53)。免疫細胞が病原体を認識して攻撃する仕組みを解明したことが世界
的に高く評価され、日本人研究者のなかで最もノーベル賞に近い人物の1人とい
われる。米調査会社によると、2004―05年の論文引用回数は世界トップ。

 京都大大学院医学研究科の教授会がこのほど、分子生物学分野の新任教授に
迎える方針を決めた。大阪大をしのぐ広さの施設を提供するなど、研究環境を
厚遇することを打診した模様だ。

 一方の大阪大側も「阪大が感染・免疫学を発展させるのに審良教授は欠かせ
ない人物。京大に引けをとらない研究環境を整える」(木下タロウ微研所長)
と慰留に努める。