『東京新聞』2006年6月9日付

『愛国心』懸念消えず 教育基本法改正案 実質審議が終了


 衆院教育基本法特別委員会は八日、今国会での実質審議を終えた。森喜朗前
首相ら自民党文教族は四月末、教育基本法改正案の国会提出にこぎ着けたもの
の、小泉純一郎首相が会期延長を拒否し継続審議が早々と決定。「愛国心」な
どをめぐる与野党の攻防は尻切れとんぼに終わった。同法改正論議は生煮えの
まま、「ポスト小泉」政権に引き継がれる。 (佐藤圭)

 論戦の焦点は、やはり愛国心だった。当初は、自民、公明両党の調整で「我
が国と郷土を愛する態度」との表現に落ち着いた政府案と、「日本を愛する心
を涵養(かんよう)」と踏み込んだ民主党案との相違がポイントになるとみら
れていた。

 自公連携にくさびを打ち込む狙いもあった民主党だが、首相が「それほど大
きな違いがあるとは思えない。心を表したものが態度だ」と争点化を回避。今
国会での改正が絶望視される中、政争含みの攻防は影を潜めた。

 そこでクローズアップされたのが、学校現場での愛国心の評価の在り方。首
相は先月十六日の衆院本会議で「児童や生徒の内心に立ち入って強制するので
はない」と述べ、「内心の自由」を尊重する考えを強調した。

 ただ、その後の委員会審議では、小学校で愛国心をランク付けする通知表が
採用されている実態が次々と明らかに。

 小坂憲次文部科学相は、そうした通知表の評価基準が「わが国の歴史や伝統
を大切にし、国を愛する心情をもつ…」などとなっている点について、「内心
(の自由)についての直接的な評価ではない」と釈明。文科省は全国的な実態
調査にも消極的な姿勢に終始。政府や地方自治体の運用次第で、愛国心が強制
される懸念は消えなかった。