『岡山日日新聞』2006年6月6日付

【一筆一心】国会は教育を議論せよ


 懸案の教育基本法改正ができそうにない。18日の会期末を控え小泉首相が
「延長なし」を強く指示したため、日程的に難しくなったが、9月の自民党総
裁選をにらみ"意中"の後継候補・安倍官房長官に"準備期間"を与えるためとい
ううがった見方も出ている▼教育より政局重視で、自民党内にも国会の判断に
首相の介入は問題として強い不満も出たが、教育基本法だけでなく国民投票法
案、防衛庁の省昇格関連法など重要法案が軒並み先送りだ▼教育基本法は「教
育の憲法」とも言われ、戦後60年間手付かずだったが、今回は改正のため与
野党間で「愛国心」表記をめぐり、論議がようやく盛り上がってきたのに、小
泉流の"総合的政治判断"で継続審議になってしまう▼「個性重視」と「自由」
の意味のはき違いが招いた戦後教育を、根本から見直すためにも基本法の改正
が欠かせない。自分さえよければの利己主義がはびこり、家庭内や地域コミュ
ニティーも温かさが欠ける。地域の教育力が弱まり、それが青少年の健全育成
にも響いている▼教育改革を緊急課題として捉えるのは政治の責任だし、その
ための教育基本法の改正ではなかったのか。非行の増加や荒れる教育現場、子
どもたちの生態を見れば、今の教育が制度面はともかく内容、質においてとて
も合格点はつかない。地域も学校も落ちこぼれやその予備軍をどう軌道修正さ
せるか▼一番の問題は家庭の教育力の弱体にあるが、学校教育においても公徳
心や国、郷土を愛する心の涵養(かんよう)があまりにも足りない。そこを正
す根本が基本法の改正で、国会は教育をもっと語れと言いたい。