国家のための教育に方向転換させる教育基本法改悪に反対し、国会での廃案を求める

                  2006年5月31日:全国大学高専教職員組合附属学校部会

自民・公明両党は4月13日、"教育の憲法"といわれる教育基本法の「改正」案(以下、「案」とする。)を決定しました。これを受けて、政府は「案」を国会に提出し、政府及び与党は、今国会での成立をねらっています。
教育基本法は1947年、戦前の軍国主義・国家主義的な教育が国民を侵略戦争に駆り立てたことへの反省に立って制定されたものです。そしてそれ以来、憲法とともに、時代を逆もどりさせようとする様々な動きを阻止するよりどころとなってきました。また、教科書の無償配布や障害児教育の豊かな発展など、その理念は教育現場でたくさんの実を結んできました。
ところが「案」は、国民のための教育を国家のための教育に方向転換させる内容です。
 教育基本法第十条には「教育は、…国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。A教育行政は、この自覚のもとに、…必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない」と定められています。これは、教育が子ども・保護者・市民と教員との連帯・共同の営みであることを示すとともに、行政の役割はそうした営みがより良く保障されるための条件整備にあることを言うものです。「案」では、この内容が削除されています。
 その一方、政府が『教育振興基本計画』を定めるという規定が盛られています。これまで、政府が定めた教育「計画」によってどれだけ現場の教育が歪められてきたでしょう。国立大学の法人化、学習指導要領や国旗・国歌の押し付け、教科書検定など、その事例は枚挙に暇がありません。今度はそれを教育基本法に明記しようと言うのです。
また、「案」では、新たに「教育の目標」について示され、教育によって「達成する」目標として5つの項目が挙げられています。そのひとつに「愛国心」があり、それを「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできたわが国と郷土を愛する」ことと規定しています。そして「・・・態度を養う」と続きますから、この条文は、「案」の規定する「愛国心」を子どもたちや青年、成人に注入教化しようとするものであると言わざるを得ません。
 愛国心は法律によって強制されるものであってはなりません。思想及び良心の自由を定めた日本国憲法にも反します。
このような「案」は、教育の目標を人格の完成に置くことなく、日本を戦争のできる国に近づけるためのものです。教育基本法の改悪を許すことは憲法改悪にも道をつけます。
わたしたちは教育基本法の改悪を阻止し、日本国憲法と教育基本法が真に生かされる社会の実現に向けて奮闘します。