『京都新聞』2006年6月1日付

京大に育て、女性研究者
7月にセンター設立、育児支援など実施


 女性が男性とともに活躍できる大学にしようと、京都大は31日までに女性
研究者への支援事業「京都大学モデル」の実施を決めた。7月1日に「女性研
究者支援センター」を設立、育児支援や、女子学生を増やすための小中高校へ
の「出前授業」など、さまざまな事業を展開し、10年後に女性教員の比率を
20%にまで上げることを目指す。

 日本の大学の女性研究者比率は16%(2004年)で、欧米の半分以下。
さらに京大は6・6%(05年)と低く国立大でも下位という。博士学位授与
者の女性比率は21%あり、多くの優秀な女性研究者が産休や育児などで「途
中下車」したまま研究から離れているのが現状という。

 京大は、男女共同参画社会実現とともに、国際的な競争の中で優秀な研究者
を確保するため、女性をもっと迎え入れる必要があるとして、大学全体で女性
研究者の支援に力を注ぐことにした。

 支援センターは医学部(京都市左京区)に隣接する宿舎を改修して開設。今
秋にも学童保育や京大病院での病児保育、児童・幼児の送迎事業を始める。育
児しながら研究できるようにキャンパスごとに授乳室などを備えた「赤ちゃん
コーナー」も開設。産休や育児休暇中の研究や実験、講義に補助者を雇用する
ほか、先輩女性研究者のアドバイス制度も設ける。京都市、京都府と連携し、
ハラスメントなどの相談窓口の開設や子育て情報の提供なども行う。

 さらに女性が少ない理系分野で将来の研究者を育てるため、地域の小中高校
に女性研究者を派遣して講義を行う。男性研究者への啓発セミナーなども開催
する。

 文部科学省の女性研究者支援モデル育成事業としてこのほど、奈良女子大や
東北大など9大学と共に採択された。国の補助金と大学独自の財源で長期的に
取り組む。担当の松本紘副学長は「採用面で『女性優遇枠』を作って増やすの
ではなく、女性も活躍できる環境を整備することで女性研究者を迎え入れたい」
と話している。