教育基本法改正案の廃案を求める声明

 4月28日、教育基本法改正案が閣議決定され国会に提出さ
れた。5月16日には衆議院に教育基本法特別委員会が設置さ
れ、現在審議中である。
 本改正案については、教育の目標の一つとして「我が国と郷
土を愛する」態度を養うとの文言が盛り込まれたことから、改
憲案ともあいまって「戦争ができる国づくり」を目指している
のではないかという懸念や、「愛国心」が通知表で評価された
り強制されたりして内心の自由が侵されるのではないかという
危惧が表明されている。マスコミの関心も「愛国心」に集中し
ているが、本改正案の問題はそれに止まらない。
 たとえば、第2条に詳細に定められた教育の目標が現行学習
指導要領の道徳の章に準拠している点である。教育が徳目の実
現に一元化されている姿は異様である。しかも第10条では、
親の義務として「生活のために必要な習慣を身につけさせる」
などと記し、第13条では、学校・家庭・地域等の相互連携教
育を定めている。学校・家庭・地域を総動員して子どもへの「心
の管理」を進めようとしているのである。
 また、文部科学省の権限が拡大し、教育の管理が一層深まる
恐れがある。第17条に盛り込まれた「教育振興基本計画」の
策定により、文部科学省が審議会の議を経ることで国会を通す
ことなく教育行政の重要事項を決定することが可能となるので
ある。小泉内閣の進める構造改革の手法や国立大学法人の経験
からすると、「教育振興基本計画」の策定が、実施・評価、そ
れに応じた資金配分の「適正化」につながるものと予想される。
さらに、教育は「国民全体に対し直接に責任」を負っていると
の現行規定を削除し、法令に従うことを明記している点も、教
育行政による教育への支配・介入が法律の執行を理由に正当化
される危険性をはらんでおり、重大な問題である。
 今日、確かに教育は様々な難問を抱えている。しかしながら、
教育基本法改正案がもくろむような、子どもの「心の管理」と
文部科学省などによる教育管理の強化は、事態の改善への一助
にもならない。以上を踏まえ、我々は教育基本法改正案の廃案
を強く要求する。

2006年5月31日   
             佐賀大学教職員組合執行委員会