『日刊工業新聞』2006年5月30日付

政府、大学知財本部・TLOの知財活用へ一体化


 政府の知的財産戦略本部は、大学の知財管理や知財活用の拡大をはかるため、
組織や制度の抜本改革に着手する。06年度中に大学知財本部(「ことば」)
と技術移転機関(TLO)の事業実態を評価・分析し、組織の一本化を含めた
連携強化策を打ち出す。 同時に、大学の特許取得料減免措置も拡大する。 実
現のため07年通常国会に関連法案を提出する。 知財本部は、一連の改革策を
6月に策定する「知的財産推進計画06」に盛り込み、米国と比較して立ち遅
れている大学の知財活用の活性化を促す。

 大学における知財活動は、国立大学の法人化と相まって取り組みが活発化し、
すでに全国で142の大学知財本部(05年度末)が発足している。 一方、大
学の研究成果を民間に移転するTLOも、承認TLOが41、認定TLOが6
機関など組織化が進んでいる。

 ただ、産業界からは大学知財本部とTLOの役割は重複しており、どこを産
学連携窓口にすればよいのか分からないなど、組織のあり方を疑問視する声も
上がっている。

 さらに、大学知財本部は文部科学省、TLOは経済産業省が所管し、それぞ
れが補助金を交付し支援しているが、立ち上げ期支援の補助金は数年内に打ち
切られる見込みで、このままでは自立できない組織が多数発生すると見られて
いる。

 こうした実態を踏まえ、政府の知財本部は組織の実態を検証したうえで、大
学知財本部とTLOの統合を促す取り組みに着手する。 ただ、TLOは複数大
学が共同で設置したり、地方自治体が主導するなど、組織形態がさまざまなた
め、一律に大学と統合するのではなく、地域の実態に応じた連携強化も認める
方針だ。

 また、先進的な取り組みを行う大学知財本部をモデル校に選定し、国際機関
との連携や人材育成を支援する強化策も導入する。 さらに、発明者に大学生、
院生などが含まれていたり、TLOから大学へ権利移転する場合の特許料の減
免措置を導入したり、海外特許出願費用を補助する支援策も拡充する。


【ことば/大学知財本部】
 これまで大学における発明は、原則個人帰属とされてきた。これだと研究成
果の社会還元の見地から、必ずしも十分とは言えず、かつ知的財産を死蔵しが
ちとの指摘が多かった。 政府の「知的財産戦略大綱」などで、個人帰属から機
関帰属への転換が提言され、原則機関帰属になった。 これにより整備された知
的財産の「創出」、「保護」、「管理」、「活用」を戦略的に実施するための
体制。