『東京新聞』埼玉版 2006年5月30日付

『授業料減免を抑制』
県負担急増で検討委が提言書


 「県修学支援制度のあり方検討委員会」(委員長・横道清孝政策研究大学院
大学教授)は二十九日、島村和男県教育長に、提言書を提出した。全国初の奨
学金貸与事務の金融機関委託を提言しているが、背景には急増する県立学校の
授業料減免額の抑制を図りたいという考えがある。救済のために、奨学金につ
いては基準を緩和することも盛り込んでいる。

 授業料減免者数は年々増加、減免額も激増し県財政を圧迫していることに対
応した措置。提言を受け、県は九月議会に関係条例の改正案を提案。来年度か
ら施行したい考えだ。

 現行の授業料減免制度では、保護者が死亡したり、生活保護を受けている世
帯は授業料・入学金を全額免除。世帯の所得が生活保護法の最低生活費の一・
三倍未満の場合も全額を免除している。一・三倍以上で一・五倍未満の場合は
半額免除となっている。

 減免者数・減免額は毎年増加しており、二〇〇五年度は一万二千百八十八人、
十二億五千四百万円と一九九九年度のほぼ倍になっている。県負担の急増で修
学支援制度そのものの存続が危ぶまれる状態だったという。

 このため提言では「真に適用が必要な生徒」への支援策と限定し基準を変更。
保護者が市町村民税所得割非課税に当たる場合だけ全額免除とすることにした。
半額免除はなくなる。これにより「免除者は約四千人減り、免除総額も約四億
円減少する」(教育局財務課)と試算する。

 減免基準の見直しで対象から除外された生徒を奨学金制度の拡充で救済する。
従来の全教科平均評定3以上というような学力要件はなくし、出費が多い入学
時期を手厚く支援する「入学準備金制度」の創設を盛り込んだ。

 奨学金事業の拡充で増える県の事務負担を軽減するため、金融機関とも連携。
国からの交付金の一部を金融機関に預託し、不足する資金の調達や債権管理・
回収など事務全般を委託する。

 現在、奨学金受給者は七百七十六件(〇五年度)で国からの原資でほぼ全額
がまかなわれている。しかし、事業拡大で原資が不足したり、金利負担が増し
た場合などについて、同課は「減免制度変更で浮いた分を充てる」としている。
(藤原正樹)