『朝日新聞』2006年5月24日付

世界的研究所、大学に30カ所 科技会議が目標示す


 国の経済発展につながる革新的な研究成果を大学で生み出すため、総合科学
技術会議(議長・小泉首相)は、30カ所を目標に世界水準の研究拠点をつく
ることを決めた。23日の本会議で、能力主義の徹底や、研究者・教員の2割
以上を外国人にすること、研究教育の完全英語化など、拠点の具体像が示され
た。

 各拠点は従来の専攻にとらわれず、教授10人、研究者50人以上の規模と
する。場合によっては大学外の研究所などとも協力し、分野を超えた融合型の
組織をつくる。

 現時点でこうした基準を満たす拠点はないが、文部科学省が詳細な基準をつ
くり、有望な拠点に対して10〜15年間重点的に助成する。各学問分野で世
界の上位20位に入ることが目標で、1大学が複数の研究拠点を持つこともあ
りうる。

 想定する学問分野は、材料科学や生命科学から数学や素粒子物理学までと幅
広い。応用範囲の広い成果は基礎的な科学研究からこそ生まれるとして、応用
科学には限らなかった。

 お手本は米国の大学。例えばロボット工学の世界的拠点である米カーネギー
メロン大は、機械工学から人工知能まで幅広い分野の研究者と大学院生200
人が集まり、軍や米航空宇宙局(NASA)、企業などから年間50億円の研
究費を受託する。生物工学で知られるスタンフォード大の拠点は教員、研究者
600人が在籍、ノーベル賞受賞者が名を連ねる。

 世界水準の拠点づくりを目指す取り組みでは現在、文科省の「21世紀CO
Eプログラム」(COE=センター・オブ・エクセレンス)がある。同省は来
年度から、採択数を絞って助成額を増やす新プログラムを始める方針だが、総
合科学技術会議はこれも30カ所の拠点づくりに役立つ中身にするよう求める。