『朝日新聞』2006年5月21日付

「国立大の後援会に寄付必要?」
法人化で財政難 実質学費に


 4月末、神奈川県相模原市の主婦切石康子さんから「次男が進学した国立大
の後援会と学部の後援会から入金依頼が来た」とのFAXが届いた。次男が今春進
学したのは長崎大歯学部。入学後まもなく実家に、大学と歯学部それぞれの後
援会の申込書が送られてきたという。

 長崎大歯学部には79年の開設当時から「歯学部教育後援会」がある。加入
は任意だが、加入率は8割超。入学直後に6年分として8万円の支払いを求め
ている。集まった資金は、1回500万円前後かかる臨床実習前の「共用試験」
の実施や、学生による歯科医師国家試験向け学習会の補助に充てられるという。

 同大全体を対象にした「長崎大学後援会」も00年に発足した。歯学部生に
は6年分1・5万円を求めている。加入率は55%。学生向けの就職活動のし
おりや企業向け大学紹介パンフレットの制作費、花壇の整備などに使われてい
る。同大の担当者は「以前は大学の予算で進めてきたが、国からの出資が削ら
れ、外部資金がなければ十分なサービスを提供できなくなった」。保護者には
会費の「二重払い」を疑問視する意見もあり、大学側は一本化の検討もしてい
るという。

 山口大でも、大学全体に「教育研究後援財団」があり、各学部には「教育後
援会」がある。「財団」は1口1万円で新入生の保護者に寄付を求めているが、
回収率は4分の1程度。合同就職説明会の運営費などを助成するという。「後
援会」は例えば人文学部だと、4年分1万9千円の寄付を求め、半数以上の回
収率だという。

 国立大は04年に法人化され、国からの運営費交付金が「効率化」分として
毎年1%ずつ減らされるなど、財政状況が厳しさを増している。代々木ゼミナー
ル入試情報センターの坂口幸世本部長は「任意とはいえ多くの保護者が会費を
支払う状況は、実態として学費の値上げと同じだ。国立大の中でも、大学や学
部によって、実質的に学費に差が出始めているようだ」と指摘する。

 文部科学省国立大学法人支援課の小松親次郎課長は「国立大がさまざまな資
金調達を考える中で、保護者に寄付を求める動きも今後広がるかもしれない。
ただし私大ではないので、強制的に徴収するようになると問題だ」と話した。
(増谷文生)