『沖縄タイムス』2006年5月18日付

非常勤講師、労組結成へ/大学横断


 県内の大学で働く非常勤講師が初めて労働組合を結成する。県立芸術大学
(那覇市)など複数の職場を横断する労組として、労働条件や待遇の改善を各
大学に求めていく方針だ。二十九日に結成準備会を開く予定。メンバーは「非
常勤講師は安上がりな労働力として使い捨てにされている。団結して大学側と
交渉していきたい」と話している。(田嶋正雄)

 労組結成の準備を進めているのは、県芸大非常勤講師の平井真人さん(56)
ら。他大学で働く非常勤講師にも参加を呼び掛ける。

 平井さんは二〇〇四年から県芸大の非常勤講師を勤め、月十八時間の講義で
賃金は十二万円余り。雇用保険や年金などの社会保障は一切ない。

 昨年度、同大が労働基準監督署の勧告を受けるまで、一部賃金の未払いもあっ
た。労働条件通知書も未発行だったため、知らぬ間に失効した有給休暇もある
という。

 別の同大非常勤講師も「受け持つ授業以外に、ほかの講師への連絡など、本
来は事務職員がするべき雑務もさせられているのが現状。県立とは思えないず
さんな労務管理で、納得できない」と不満を訴える。

 同大は昨年度までの賃金未払いや通知書未発行を認める一方、「現在、非常
勤講師が事務をしているということはない」と反論している。

 九日に開かれた学習会では、首都圏大学非常勤講師組合の志田昇書記長が
「全国のほとんどの大学非常勤講師が無権利状態のまま、専任教員の六分の一
の低賃金で働いている」と説明。「文部科学省は『専任教員と差のない均衡処
遇をしなければならない』とはっきり認めている。組合をつくり、対等な立場
で労使交渉をすることが待遇改善の近道だ」と指摘した。

 平井さんは「非常勤という弱い立場であり、個人の力では限界がある。組合
として団交で権利を要求していきたい」と話している。結成準備会は二十九日
午前、沖縄大学・土田武信助教授の研究室で開かれる。