『朝日新聞』2006年5月18日付

数学研究ピンチ 論文、米の5分の1 博士号は6分の1


 日本の数学研究は、論文の数が世界の6位に甘んじ、研究費の伸びも他分野
に比べて低いなど、「じり貧」状態にあることが文部科学省科学技術政策研究
所の調査でわかった。都内で17日にあったシンポジウムで報告された。数学
者の活躍の舞台は、大学中心の日本に対し、欧米では産業界への進出が盛んで、
日本も数学振興のための産学連携が必要だとした。

 調査では、世界の数学論文における日本の論文数は03年現在約6%で6位。
トップの米国(約30%)に遠く及ばず、00年には中国にも抜かれた。

 研究者の人数は大学を中心に約3千人で、米国(1万〜4万人)や仏(60
00人)より少ない。年間の博士号取得者は180人で、米国の6分の1。研
究費も、国の研究費全体に占める割合は05年まで7年間減り続けている。

 だが、他分野の研究者が数学に寄せる期待は大きい。アンケートで自分の研
究テーマに数学研究者の協力がほしいか問うと、3人に2人がほしいと答えた
ほか、「半導体回路の設計やコンピューターのソフトウエアなどの設計で数学
は欠かせない」「数学と他分野研究との交流の場が必要」などの意見があった。

 同研究所の桑原輝隆総務研究官は「日本も、大学と産業界が、協力態勢をもっ
と議論する必要がある」と話している。