『西日本新聞』2006年5月11日付

経団連、九大で人材育成 IT14社が講師派遣 全国9校と連携へ


 日本の情報技術(IT)関連業界で不足しているソフトウエア技術者育成の
ため、日本経団連は九州大など全国九大学と連携し、企業で即戦力となる人材
の育成に乗り出す。大学側は大学院に技術者育成の新コースなどを2007年
度に開設、日本IBMなど経団連所属のIT関連14社が講師を派遣する。経
団連が人材育成のため、複数の大学と大掛かりな連携を行うのは初めて。10
日には経団連内にプロジェクトチームを発足させ、カリキュラム内容などにつ
いての検討を始めた。

 今回、育成するのは企業のシステム全体を設計、統括する上級技術者。日本
の情報工学系などの新卒者は「理論偏重で実務につながる力量を備えておらず、
入社後に一から研修が必要なケースがほとんど」(経団連)だという。このた
め経団連は所属企業から技術者を講師として派遣、実践教育を行うことを計画。
全国の大学を対象に公募を行い、九州大、筑波大の2校を重点協力拠点校に、
東海大や琉球大など7校を協力校に指定した。

 このうち九大大学院は07年度にシステム情報科学府の情報工学専攻内の新
コース(20人)として開設。08年度には格上げした新専攻として独立させ
る方針。他大学も20―30人程度の新専攻を設置。将来的には専門職大学院
として10校程度の開設を目指す。

 講師を派遣する14社は、日本IBMのほか富士通、NTTデータ、日立、
NECなど。カリキュラムは各社のものを参考に経団連と大学側が共同で作成
する。講師の人件費は企業側が負担、インターンシップの受け入れや修了生の
企業への優先採用枠も設ける。

 経団連によると、ソフト技術者は新卒採用で年間3万人が必要とされている
が、現実には1万5000人程度にとどまっている。人材不足などから新製品
の市場投入の遅れやソフト故障などのケースも増えているという。