『日本経済新聞』2006年5月11日付

阪大、産学連携へ日本版LLC──新会社設立、教員の活動後押し


 大阪大学は産学連携の受け皿として、会社法に盛り込まれた新たな会社の形
である日本版LLC(合同会社)を設立する。産学連携を希望する教員と企業
を引き合わせて共同研究の立ち上げや運営を支援。研究室の仲介も手掛ける。
首都圏の大学に比べ産学連携の機会が少なくなりがちなことから、組織的に教
員の活動をバックアップする。

 合同会社の名称は「フロンティア・アライアンス」(大阪市)。阪大大学院
工学研究科の教員7人が350万円を出資して組織設立で合意、11日に会社登記す
る。出資メンバーは阪大で産学連携の窓口的な役割を果たしてきた教員が多数
を占めている。

 フロンティア・アライアンスは6月にも出資者を募り、出資金が1000万円を超
える予定。市場性が見込める研究テーマを選別し、具体的な研究計画を教員が
立案できるようサポートする。さらに大学構内で空いている部屋や設備を紹介、
教員らが大学から譲り受けた研究成果の学外への営業活動も代行する。大学教
員らを講師とする研究プログラムも開講し、社会人の再教育にも乗り出す考え
だ。

 豊田政男・阪大大学院工学研究科長は「大学本体と別組織とすることで、国
立大学法人の制約から離れ、独自に優れた大学OBを雇ったり、高額な研究設
備を購入しやすくなる」と話す。企業の研究事業の誘致や研究費の獲得に際し
ても柔軟度が高くなるとみている。民間企業や私学に迫る体制を築き、阪大教
員の研究を支援する考えだ。

 ▼合同会社 米国のLLC(Limited Liability Com
pany)をモデルにしたもので、株式会社同様出資者が出資を限度とする責
任を負うが、株式会社に比べ会社内のルールは自由に決められるのが特徴。専
門家の技能をビジネスに生かして、少人数で事業を展開する場合に向く会社形
態とされる。欧米では研究開発型やソフトウエア関連企業などで普及している。