『岩手日報』2006年5月9日付

ベンチャー企業18社に 岩手大発


 岩手大発のベンチャー企業が増えている。2002年に1社が起業して以来、
これまでに18社誕生した。全国的には情報技術(IT)関連事業など工学系
が多い中、教育学部や農学部からも企業が生まれているのが同大発ベンチャー
企業の特色だ。一方、利益を出している企業はまだ数社にとどまっており、企
業としての業績を確保し独り立ちすることが課題だ。

 経済産業省が2001年、「大学発ベンチャー1000社計画」を発表して
以降、全国的に大学発ベンチャー企業は増え、04年度末までに1000社を
達成した。

 同大は03年度4社、04年度6社、05年度7社が起業。18社は県内の
大学ではトップだ。

 昨年度起業した7社の内訳は農学系が4社、教育系が2社、情報系が1社。
教育系では工業デザイン、農学系では全国的に実践例があるバイオ技術のほか、
健康食品・プロポリスの開発販売、動物へのはり治療などの企業が誕生してい
るのが特徴だ。

 一方、現段階で利益を得るまでに成長した企業は数社にすぎないという。そ
の中の1社で03年に社員4人で起業したマイクロ歯車の技術開発などを手掛
けるアイカムス・ラボ(盛岡市)は、現在社員が8人となり、取引先も増えた。

 片野圭二社長は「開発だけでなく、それを基に会社として成立させていくた
めには、営業面の充実や資金、そして人材が欠かせない」と強調。これらの課
題クリアが企業の成長に必要との認識を示す。

 同社は大学生のインターンシップ(就業体験)受け入れも積極的に行ってい
る。片野社長は「大学発ベンチャー企業は大学との共同研究ができ、知識を得
られるなどメリットが多い。地域貢献の意味でも学生の就職先となるようにし
ていきたい」と展望を描く。

 ベンチャー企業の支援を行う同大地域連携推進センターの安保繁インキュベー
ションマネジャーは「起業から軌道に乗るまでには3、4年はかかる」と理解
を求め、「企業として経営を軌道に乗せ、人材育成の受け皿となることが重要。
今後はどれだけ地域に貢献できる企業に成長していくか、成果が求められる」
としている。