『朝日新聞』2006年5月8日付 文科省、大学院選別し助成へ 研究指導型と教育型に 最先端の研究者を育てる「研究指導型」か、視野の広い人材を育てる「教育 型」か――。文部科学省は来年度、全国の大学院の区分けを強化する。世界水 準の研究拠点(COE=センター・オブ・エクセレンス)に大型予算をつける 21世紀COEプログラムは拠点を半数に厳選し、1カ所当たりの予算は倍増 する。COE以外に向けては、社会の幅広い分野で活躍可能な人材を育てる事 業支援を大幅に拡充する。 02年度に始まった21世紀COEプログラムは、平均5.1倍の競争率だっ たが、大学側の意向に配慮した結果、助成対象は93大学274拠点に広がっ てしまい、「ばらまき」との批判を受けた。研究水準が最高とはいえない大学 も無理に応募した結果、個々の大学の特徴にあった教育がおろそかになったの ではないかとの指摘も出ていた。 同プログラムは、02年度採択分(50大学113拠点)について今年度で 5年間の助成期間が終わる。文科省は来年度からの新プログラムでは、採択拠 点数を半分にするとともに、1拠点あたりの年間助成金額は現行の平均1億2 000万円から倍額の約2億5000万円程度に引き上げる方針だ。最高額も 現行の年約3億円から5億円にする。 一方、「教育型」を目指す大学院に対しては、昨年度始めた「魅力ある大学 院教育イニシアティブ」の採択数を大幅に増やして、支援する。「応用のきか ない大学院生が多い」といった産業界などの不評を意識。大学院生に専門知識 を身につけさせるだけでなく、社会への見聞を広め、産業界や行政職、科学技 術の広報活動など幅広い分野に進めるように柔軟性を養う狙いだ。 同イニシアティブは昨年度、「高校への出前授業」「人工衛星の設計コンテ ストへの参加企画」など、45大学のユニークな企画97件を採択した。2年 間の事業に年平均3000万円を支援している。 文部科学省は「地域の特色を生かすなど、オンリーワンの研究を進めるすぐ れた大学院は、COEが無理なら教育で勝負してほしい」(大学振興課)とし ている。 |