『産経新聞』2006年5月7日付

保育所キャンパスが増加中 国立大生き残りへサービス充実


 子育てをしながら仕事や研究を続けたいと願う教職員や学生を支援するため、
キャンパス内に保育所を設置するケースが法人化した国立大学で相次いでいる。
今春開設した千葉大や名古屋大に続き、10月にスタートする宇都宮大は教職
員だけでなく地域住民の利用も受け入れる方針だ。女性の社会進出を反映する
とともに、少子化の下での生き残りをかけた競争が激しくなる中、学生や優秀
な教職員を確保するためのサービス充実を大学側が迫られていることも背景に
ありそうだ。

 千葉市稲毛区の千葉大・西千葉キャンパス内で4月3日、大学直営の「やよ
い保育園」が乳幼児4人を受け入れて開園した。利用する親は社会人の女子学
生と留学生各1人、教職員2人。妻が仕事に復帰したのを機に6カ月の長女、
有菜ちゃんを預けた千葉大大学院助手の三野弘文さん(34)もその1人だ。

 「少子化の時代に大学が子育て支援を充実するのは良いことだし、学内にあ
るので子供に何かあってもすぐ対応できる」と歓迎する。当初は自宅近くの公
立保育園を希望していたが、定員超過で入所できない待機児童になりかねず、
悩んでいたときに大学での園児募集を知ったという。

 ゲストハウスの集会室など1階部分約129平方メートルを改装し、遊具な
ども含め約1300万円をかけて保育所を造った。託児所運営会社の「サクセ
スアカデミー」(神奈川県藤沢市)に運営を委託しており、出費は少なくない。

 対象は、就学前までの乳幼児。平日の午前8時から午後6時までが基本だが、
夜10時までの延長保育も行う。保育料は教職員だと4万−6万5000円と
他の保育園と同じ程度に、学生は3万−3万6000円と低めに設定した。

 約1年前、幼児を抱える留学生から「大学内に子供ルームがほしい」という
声が寄せられたのが開設のきっかけ。古在豊樹学長は「保育環境を整えること
で優秀な女性研究者が集まり、大学全体の教育研究の質が向上できればいい」
と話す。

 名古屋大も4月3日、教職員や学生向けに直営の「こすもす保育園」を名古
屋市千種区の東山キャンパス内に開園。午後9時までの延長保育に対応し、土
曜や病後児保育も行う態勢を整えた。

 10月に「まなびの森保育園」を開園する宇都宮大学は、栃木県宇都宮市の
キャンパス敷地を無償で提供し、民間の認可保育所を誘致する。教職員らが設
立する社会福祉法人が運営にあたり、事業費の一部は教職員や学生、OBなど
からの寄付金でまかなう。廃園となる近くの市立保育園児も受け入れ、「地域
に開かれた大学」を実践する考えだ。

 このほか、昨春には北海道大(札幌市北区)や東北大(仙台市青葉区)、お
茶の水女子大(東京都文京区)が設置。私大でも、早稲田大が3年前に新宿区
のキャンパス近くで地域開放型の保育所を開設している。

 文部科学省学生支援課は「国として奨励しているわけではないが、社会人学
生の受け入れとともに、地域のニーズに応えていく考えが強まっているのでは
ないか」と話している。