『神戸新聞』2006年5月2日付

大学の研究、企業に還元 金融機関と連携、新商品開発も


 金融機関が大学と手を結び、中小企業を支援する取り組みの成果が出始めて
いる。金融機関が取引企業に、大学の技術や研究内容を紹介、製品開発や販路
開拓などにつなげる「産業」「学術」「金融」の連携。すでに兵庫県内に本店
を置く四つの銀行・信用金庫が大学と提携し、企業を支援。新製品を生み出し
た会社もある。(大久保 斉)

 麩(ふ)の専業メーカー、島田商店(姫路市飾磨区)は二月、業界で初めて
米粉を原料にした麩を開発した。弾力性に富む米粉の麩は「かむ力の衰えを防
ぐ」と、島田進一社長は老人ホームや病院に売り込む考えだ。

 主原料は本来小麦粉だが、地元で収穫される米に着目した島田社長。米粉は
小麦粉よりも硬く、製法が課題となった。

 取引のある姫路信用金庫に相談したところ、同信金が、提携している県立大
の吉村美紀助教授を紹介。食感に代表される「食品物性」が専門の吉村助教授
の助言で、もちもちとした食感が特長である米粉の麩を作ることに成功した。

 同信金は、製鎖業の衣川製鎖工業(同区)も県立大に橋渡し。さびにくいス
テンレス製チェーンの開発を支援するなど計六社と県立大との共同研究に一役
買う。

 連携が企業の資金調達を円滑にした例もある。植物栽培装置メーカー、きゅ
ぶふぁーむ(三田市)は電力消費量を抑えた植物育成ランプを試作。共同開発
した神戸大が、みなと銀行(神戸市)と提携していたため、同社は同行から迅
速な融資を受けられた。尼崎信金(尼崎市)は甲南大、西兵庫信金(宍粟市山
崎町)も県立大とそれぞれ提携している。

 「産・学・金」連携の背景には、取引先の多面的な支援で資金需要の喚起を
目指す金融機関▽大学を活用して開発費を抑えたい企業▽特許使用料などの収
入を期待する大学-という三者の思惑の一致がある。中小企業融資に都市銀行が
力を入れ始めている中、地域金融機関には「大学の技術を活用した支援で地域
での存在感を高める」(みなと銀)狙いもある。