『中日新聞』2006年4月30日付

行政法人「滋賀大」3年目
学生向けサービス拡充


 国から独立し、行政法人として再出発してから三年目の春を迎えた滋賀大。
国からの交付金は削減方向にある中でも、駅と大学を結ぶ専用バスの運行や学
習教育支援室の開設など、学生へのサービスを広げている。生き残りをかけた
大学間の競争が激しさを増す中で、サービスで学生の心をつかもうと努めてい
る。 (細川 暁子)

 四月六日。彦根市のJR彦根駅と経済学部キャンパス(同市馬場)を結ぶ専
用バスの運行が始まった。同大学には二〇〇四年度まで路線バス二十五本が停
車していたが、路線変更に伴い、五本に激減。学生から不満の声が上がってい
たため、平日の午前八時から午後九時まで発着計三十九本の運行を決めた。

 「法人化によって、大学の裁量が増し、予算を自由にやりくりできるように
なった。その結果、学生へのサービスに目を向けるようになった」と話すのは
財務・施設担当の斉藤和信理事。確かに〇四年の法人化以降、同大学は学生へ
のサービスを拡充している。

 昨年春には経済学部の学習教育支援室を開設。支援室には、成績優秀で、教
授から指導能力があると認められた大学院生と学部生が当番制で待機しており、
学生たちの“助っ人”として勉強をサポートしている。また、支援室ではパソ
コンで定期試験の過去問題を検索、印刷できるほか、講義で使った資料も配布
している。

 学生や教員は大学のサービスをどう評価しているのか。「支援室では教授や
先輩がきめ細かく指導してくれる。学生数が多い私立大に行かなくてよかった」
と話すのは経済学部二回生の木村早希さん(19)。支援室の運営メンバーの
一人、経済学部の大浜巌助教授(34)は「法人化で大学間の競争が激しくなっ
た。東大、京大のように大きい大学は何もしなくても学生が集まるが、地方の
大学は、質のいいサービスが不可欠」と話す。

 一方で、大学の懐具合は厳しさを増している。大学の運営は、授業料などの
自己収入と国からの「運営費交付金」を主な財源としている。しかし、法人化
後は、交付金は毎年1%ずつ削減され、年間約三千万円が減っていくことにな
る。厳しい環境だが、教職員らは電気代やコピー代を節減することで、運営の
効率化に努めている。

 独立性を高め、柔軟な組織運営で、サービスの向上、効率化を図ろうと、創
設された独立行政法人。学生や予算獲得の競争の大きなうねりの中で、教職員
らは手探りながらも、魅力ある大学づくりに奔走している。