『読売新聞』2006年4月28日付

伝統の尊重など明記、教育基本法改正案を閣議決定


 政府は28日午前の閣議で、教育基本法改正案を決定した。同日夕に国会に
提出する。

 成立すれば1947年の制定以来、初の全面改正となる。公共心の養成や伝
統の尊重を明記したほか、生涯学習や家庭教育などの条項を新設した。

 今国会での成立を目指す政府・与党は、5月の連休明けに衆院に特別委員会
を設置し、審議を急ぐ方針だ。ただ、会期延長問題も絡み、成立の見通しは不
透明で、終盤国会の焦点となりそうだ。

 小坂文部科学相は28日の記者会見で、「(現行法の)普遍的理念は大切に
しつつ、新しい理念を明確にして成立に全力を尽くしたい」と述べた。

 改正案は前文と18条で構成される。前文には、現行法が重視していた「個
人の尊厳」に加え、「公共の精神を尊び」や「伝統を継承」との表現が加わっ
た。

 教育目標には、「愛国心」の表現として、「伝統と文化を尊重し、それらを
はぐくんできた我が国と郷土を愛する」態度を養うと盛り込んだ。

 若者の無業者(ニート)増加を踏まえ、「職業及び生活との関連を重視し、
勤労を重んずる」態度を養うとも明記した。

 また、義務教育年限の延長も視野に入れ、現行法の「9年」を削除した。

 子育てを重視する観点から、家庭教育と幼児期の教育の条項を新設し、保護
者に子のしつけを、国と自治体に幼児教育の振興をそれぞれ求めた。

 民主党は連休明けにも対案をまとめる予定だ。野党側は、与党が提案した5
月9日の特別委設置に反対しており、実質的な審議入りは5月中旬以降との見
方が強まっている。