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『日本海新聞』2006年4月27日付

産学官連携し健康食品開発、事業費3億円


 文部科学省は二十六日、鳥取県が申請した染色体工学技術を生かした産官学
連携の健康食品開発事業を採択した。事業は米子・境港エリアを対象に、鳥取
大学や県、県内外の企業が共同で実施。事業費は三年間で三億円と県内の産学
官連携研究では最大規模となる。豊富な研究費を活用してキチン・キトサンな
ど県内開発商品の効能を実証し、付加価値を高めて商品化する。健康産業の創
出に弾みがつくものと期待される。

 事業名は「染色体工学技術等による生活習慣病予防食品評価システムの構築
と食品等の開発」。食品製造業が集積している米子・境港エリアの特性に着目
し、地元の水産資源と鳥取大学が持つ染色体工学技術を活用して生活習慣病予
防を目的にした健康食品を開発、商品化する。また、商品の効能を測定する独
自の評価システムを確立する。

 具体的には、県内で開発されたキチン・キトサン、フコイダン、コラーゲン
を中心に研究に取り組む。キチン・キトサンはカニ殻からつくられ傷の再生効
果、もずくなどに含まれるフコイダンは生理活性効果や抗がん作用、魚のうろ
こからつくられるコラーゲンは関節・軟骨の再生効果などが期待されている。
これらの効能が科学的に実証されることで、商品や商品化技術の付加価値が高
まる。

 研究は、バイオ研究の第一人者、鳥取大学大学院医学系研究科の押村光雄教
授が統括。鳥取大学の医、農、工三学部と県産業技術センターなどを中核とし
て、製薬会社を含む県内外の企業十一社が参画し、研究者は合わせて約四十人
になる。

 交流事業として、県産業振興機構が科学技術コーディネーターを配置し、生
命科学研究を支援する鳥取バイオサイエンス振興会(川崎寛中理事長)など国
内外の機関と連携。研究成果の事業化や商品化のほか、開発商品の販路拡大な
どのビジネス活動を展開する。

 押村教授は「今までも共同研究はあったが、ばらばらの取り組みだった。事
業採択を受けて多種多様な分野の融合がはかれる。今後の産学官連携の起爆剤
になり、新たな産業を興すことにつながる」と話している。

 文科省の産学官連携促進事業は、地域産業の新規創出、育成などを狙いに
二〇〇二年に創設。昨年度までに全国で四十地域が採択され、今回は五地域が
採択された。