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『読売新聞』2006年4月25日付

厚生・共済 年金一元化 公務員にも痛み
追加費用27%減 官民格差なお温存も


 政府・与党が24日に決定した厚生・共済年金の一元化に関する基本方針案
は、年金の官民格差是正を目的に、現役公務員の保険料率の引き上げを現行よ
り厳しくし、公務員OBは80万人程度を対象に、公的年金としては初めて年
金給付の減額に踏み切るなど、年金で優遇されてきた「官」の側に痛みを求め
る内容となった。ただし、与党が目指した公務員OBへの税金投入の全廃など
は実現せず、自民党内からは「切り込み不足」との指摘も出ている。

 ■減額の具体例

 給付の減額はどのように行われるのだろうか。

 1942年に地方公務員となり、40年間勤務して退職し、年350万円の
共済年金を受給しているAさんのケースを想定する。Aさんは現役公務員時代、
前半20年間は恩給制度だったが、62年以降の後半20年間は共済制度に変
わった。恩給制度時代は保険料を払う必要がなかったが、恩給に相当する17
5万円は税金の「追加費用」によってまかなわれている。

 Aさんの場合、追加費用分の27%を削減する方針にのっとり、175万円
の27%にあたる47万2500円が削減対象となる。ただ、基本方針案は
「年金減額は給付額の10%を上回らない」との制約を設けたことから、実際
には350万円の10%の35万円の削減が上限となり、削減後の年金額は3
15万円となる。

 一方、54年に国家公務員となり、35年間勤務して退職し、年280万円
を受給しているBさんのケース。Bさんの恩給期間は5年間だけで、年金に占
める追加費用は40万円分とすれば、27%に相当する10万8000円が削
減され、削減後の年金額は年269万2000円だ。基本方針案は「減額によっ
て年金額が250万円を下回らない」としたことから、年250万円以下のO
Bは減額されない。

 減額の仕組みは「訴訟で負けないように、憲法が保障する財産権を侵害しな
い範囲」(自民党幹部)を想定して決まった。だが、与党は昨年末にいったん
追加費用を「廃止する」方針を決めており、27%の削減にとどまったことで、
「大きく後退した」との批判は自民党内からも出ている。

 ■保険料率

 年金の減額でOBに痛みを求めたのは、基本方針案が、保険料率の引き上げ
という現役世代にも痛みを求める内容となったためだ。

 厚生年金は今後、年0・354%ずつ保険料率が引き上げられ、17年には
保険料率の上限である18・3%に到達する。基本方針案は、共済も10年以
降、引き上げ幅を厚生年金と同じ0・354%(現行0・290%程度)に増
やし、公務員共済は18年、私学共済は27年に上限に追いつくこととした。
ただ、今後、12年間は公務員の方がサラリーマンより保険料率が低い「官民
格差」は温存されることになる。

共済年金

 国家公務員、地方公務員、私立学校教職員(私学)の3種類に分かれる。雇
われて働く人たちを対象としていることから、被雇用者の年金という点で厚生
年金と仕組みが似ており、一元化しやすいとされる。加入者数は2004年3
月末で、3共済合わせて468万人で、厚生年金は3212万人。