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『福島民報』日曜論壇 2006年4月23日付

新教員養成への挑戦


 福島大学「教育学部」は国立大学法人化の年に「人間発達文化学類」に改組
され、2005年4月にその第1期生が入学した。

 この改組については多くの方から「福島大学は教員養成を放棄するのか?」
というご質問やご心配をいただいたが、もちろん「福島大学は教員養成を放棄
してはいないし、むしろ今まで以上に重視しようとしている」。この点につい
てはなかなかご理解いただけない面もあるが、そのご理解を深めるためにも従
来の教員養成の新たな創りかえが必要となっている。

 今までは全国の教員養成学部は「教育学部」と看板に掲げ、「教員免許必修」
であることによって一応の安心感を多くの方々に与えてきた。数年前に山形大
学が「教育学部」という看板をはずそうとしたことに対して「教育」という名
称は、たとえ教員免許授与が維持されても残してほしいという声が強かったこ
とを考慮すれば、やはりこの看板は重要であったのかもしれない。結局山形大
学の場合「教育」という名称は一部残した。ただし免許必修制をはずしたが新
しく「4年」プラス「2年」(大学院修士)コースを新設することによってあ
の騒ぎは終息したかにみえる。それに比してわが福島大学はおかげさまでわれ
われが「教員養成を従来どおり維持し今後も充実させる」と宣言しそのための
実践を進めることで、一応信頼していただき、その中心にいた者として大いに
今後の責任を痛感している。

 まさに「教育」という看板、「教員免許必修」というシステムをはずしても
従来の教員養成を維持・充実させることを実証する責任がわれわれに生じたの
である。

 周知のように戦後教員養成は2つの原則―(1)大学における教員養成、
(2)開放制(教職課程認定制)―によって運営されているが、後者の原則が
一部修正され、1966年に「教員免許必修制」の一律の「教育学部」が成立
した。

 ただしそれまでも教員養成系の教育学部・学芸学部は存在しており、さらに
免許必修ではない旧帝大系の教育学部も存在している。かかる経緯の中で、責
任ある新教員養成を進めることが課題だが、従来の教員養成を維持・充実させ
るべき責任を有する一員として個人的には次のような新教員養成原則を考えて
いる。

 それは(1)教員養成は学士(学部)段階から大学院修士課程段階に重心を
移す(2)学士(学部)段階では、単なる就職指導とは区別すべき4年間のキャ
リア形成教育を確定して、その中で教員養成準備教育=教員免許選択教育を進
める(21世紀の教員養成は学士段階ではいわゆる教養教育・人間発達と文化
に関する教養教育に重点を置いて修士段階で「正式免許」を取得する)(3)
したがって修士段階において本来の教員養成を行うべく、そのための制度設計
を進める(学士段階の、人間発達と文化に関する教養教育を土台として制度設
計を進める)(4)教員養成系大学院を有する大学はその内容と方法を見直し、
必要があれば当該の学士課程と接続する修士課程(4+2)を設置するが、他
方で学士課程修了者で教職希望者に対して修士号を与え、教員免許資格を認定
する(5)教員免許更新制は大学院教員養成に向けての過渡的措置とする。

 以上の新教員養成原則をふまえた大学院教員養成を展望しつつ人間発達文化
学類のキャリア形成教育を充実させていきたい。

(臼井嘉一・福島大学人間発達文化学類教授)