|
トップへ戻る | 以前の記事は、こちらの更新記事履歴 |
『日本海新聞』2006年4月17日付 話題を追う ビジネスの種まく鳥大 鳥取大学は研究成果を企業に紹介する交流会などを首都圏で開き、ビジネス の種(ビジネスシーズ)をまいている。企業は「知財」を生かすノウハウや資 金を持っており、応用範囲の拡大など「副産物」も生まれている。一方、特許 について企業と大学の価値観のギャップも浮き彫りになってきた。鳥取発のビ ジネスシーズは芽吹くのだろうか。 「知財」あります ■目標は共同研究 ビジネス交流会は二〇〇四年三月から五回開かれており、毎回、メーカーの 担当者ら六十−八十人が来場。現在も八社と意見交換が続いている。 鳥取大はこのほか、複数の公私立大学が集まってビジネスシーズを発表する 「新技術説明会」(科学技術振興機構主催)にも参加。ここでも十社と交渉を 進めている。 鳥取大が首都圏で活動する拠点事務所「鳥取大学東京リエゾンオフィス」の 客員コーディネーター、奥信彦さんは「企業は研究のめどがつけば大きな投資 に動く」とビジネスシーズを育てる共同研究の実現を目指している。 ■アオコ除去で連携 昨秋の第四回ビジネス交流会では、工学部生物応用工学科の嶋尾正行助教授 が「アオコを除去する生態学的水質浄化剤の開発」と題してビジネスシーズを 発表。この発表に大手石油会社など三社とアオコに悩む東北地方の自治体が関 心を示し、三社が鳥取大に出向いた。 話し合いを進める中で、企業が微生物を利用した浄化剤を組み合わせた使い 方などを提案。応用範囲が広がり、ビジネスシーズの実用化が具体的に動きだ しているという。 嶋尾助教授は「研究成果を社会に役立てるには企業の執行が必要。大学の種 を企業と協力して花開かせていきたい」と意欲を示している。 ■特許か論文か 一方、企業からは研究者の特許取得に対する消極的な姿勢を指摘する声が上 がっている。 特許は出願から一年半の間は、発明の名称など一部分の出願内容以外は公開 されない。企業にとって有益なのはこの「未公開特許」で、未公開期間内に特 許を持っている大学や科学技術振興機構などと秘密保持契約を結び、最新技術 を活用しようと考える。 ところが、研究者は論文の発表本数が評価につながる場合が多いため、特許 出願をせずに論文で発表してしまうことが多いという。 奥さんは「研究本位にならず、産業界にも興味を持ってもらいたい」と指摘。 鳥取大も「知的財産は研究者と大学の共有財産という意識をもっと啓蒙する必 要がある」と話している。 ■「ビジネス畑」拡大へ 鳥取大は首都圏の「ビジネス畑」の開拓も進めている。その一環として、昨 年二月に国立大で初めて入会した東京商工会議所とのタイアップ強化を検討。 鳥取大と会員企業の交流会など、他大学に先駆けた新しい取り組みを模索中だ。 東京商工会議所には八万千七百十八件(昨年十二月現在)の会員が所属して おり、このうち約九割が中小企業。製造業やサービス業など多様な業種が集結 しており、ビジネスの種をまくには格好の場といえそうだ。 鳥取大産官学連携推進機構長を務める岩崎正美副学長は「研究成果が新製品 (の開発)につながるように、企業との共同研究を増やしていきたい」と意気 込んでいる。 |