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『朝日新聞』2006年4月16日付

国立大病院に「通信簿」 400項目の偏差値集計


 全国42のすべての国立大学病院に今夏にも「通信簿」ができることになっ
た。国立大学付属病院長会議が、各病院に診療領域別の手術件数から患者の満
足度まで約400項目の報告を求め、項目ごとの順位や偏差値を各病院に随時
提供する。課題の発見と医療の質向上に役立つとして実施を決め、公・私立大
病院にも参加を呼びかけている。当面、一般公開しないなど課題はあるが、各
地でトップを自任してきた大学病院が、優劣のはっきりする相互比較に踏み出
すのは画期的だ。

 新たに作る「国立大学付属病院データベース」は医師数、看護師数、入院患
者数、平均的な入院日数といった基礎的な項目から、患者・家族からの苦情件
数、患者満足度、患者アンケートに基づく改善点まで多岐にわたる。

 がんの手術や各種臓器移植の件数のほか、一般手術については心臓血管外科、
腹部外科など領域別に、一部領域では難易度別でも件数の報告を求める。内視
鏡や心臓カテーテルによる治療件数、体外受精件数も対象だ。

 さらに、予定手術後48時間以内の再手術件数や、術後31日以内の死亡患
者数、医薬品や医療用具による副作用報告件数、院内感染や医療事故の件数な
ど、従来、各病院が報告に消極的だった項目も含まれる。

 各病院には、各項目について、他の病院名は伏せたうえで全体の中での成績
を知らせる。約半年ごとをめどに通知する予定。一般には当面、各項目の全病
院平均などに限って公開する見通しだ。

 同会議・運営改善問題小委員会(委員長=井口昭久・名古屋大病院長)によ
ると、国立大病院の社会責任を果たす取り組みだという。国立大病院は毎年、
予算要求などの手続きで、文部科学省や厚生労働省などに、年間4000〜5
000項目ものデータを提出している。こうした業務負担の効率化にもつなが
るとしている。

 大学病院を含め施設間の医療技術と成績に差があることは医療界の常識だが、
とりわけ大学病院は、優劣比較につながる情報公開には消極的だった。しかし、
今国会で審議中の医療法改正案には、今回データベース化するような情報を一
般公開させる仕組みが盛り込まれている。手術件数などの実績や専門外来の設
置有無のほか、将来は医療の成績情報も公開の検討対象になる見通しで、大学
病院も基盤整備を迫られていた。