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『社会新報』主張 2006年4月12日付

主張 「行革推進法案」 人件費削り公共サービス切り捨て


 「簡素で効率的な政府を実現するため」。小泉政権が、今国会の最重要課題
と位置づけ衆院で審議されている行政改革関連法案は、政府や自治体の仕事を
民間に委ね、行政機構の合理化による経費削減で国民負担を抑えるために、国
と地方自治体が行革を推進する責務を基本理念に定めている。

 法案は、政府系金融機関改革、独立行政法人見直し、特別会計改革、総人件
費改革、国の資産と債務の改革を重点分野に挙げ、ほとんどが今後の検討課題
や方向性を示すだけの「プログラム法」的性格を持つなかで、公務員などの人
件費削減が目的であることは明白である。その中身も、ハローワークの職業紹
介や公立学校の教職員総数の純減、公務員の給与削減など、公共サービスの質
の低下を招く恐れが強い内容だ。すでに、各地で始まっている保育園の民営化
では、パートや契約職員の比率が高く、入れ替わりも多いため、教育サービス
の質が低下するなど、人件費削減が目的化している。

 小泉首相は、これまで「小さい政府」にするための「改革」を主張してきた。
「大きい政府=公務員が多い」、「公務員削減こそが“改革”」というロジッ
クをマスコミ利用で作り上げた。そのため、公務員の天下り問題を逆に利用し
た。

 しかし、日本は「大きな政府」ではない。先進諸国で人口1000人当たり
の公的部門職員数を比較すると、トップのフランスが96・3人、アメリカで
さえ、80・6人、ついでイギリス73・0人、ドイツ58・1人に次いで3
5・1人と日本は5番目である。そして、国内総生産(GDP)に対する社会
保障給付率とジニ係数(所得再分配の不平等さ)を見ても、日本は、社会保障
給付率がアメリカに次いで低く、ジニ係数はアメリカ、イギリスに次いで高い。
すでに、公務員も少なく、社会保障も低く、所得の不平等は広がっているのが
日本の現状であり、「改革」の前提がごまかしである。さらに、審議では、中
馬担当相が、あろうことか、公務員の天下り規制を緩和すべきと発言し、小泉
首相も天下り容認発言をした。04年度に中央省庁などの幹部が天下った企業
への国の支払いが6兆円を超え、9割以上が随意契約だ。ILOの国際労働基
準に基づく労働基本権を公務員に付与するとともに、天下りの禁止、政官業の
癒着構造の打破など、透明で民主的な公務員制度への改革こそ進めるべきであ
る。