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『読売新聞』2006年4月7日付

島根大医学部が地域枠推薦入試の定員を増やす(島根)


 島根大医学部(出雲市)が、へき地医療に携わる医師養成の〈秘策〉として
2006年度入試から導入した、県内過疎地出身者対象の「地域枠推薦制度」
の定員を、07年度入試は倍の「10人以内」に増やす。「初年度に予想以上
に良い学生が集まった」というのが理由で、同学部は「一人でも多くの意欲的
な学生に受験してもらいたい」と期待している。

 地域枠推薦は、県内の過疎地域自立促進特別措置法で指定された20市町村
(松江、出雲市は一部)の出身者が対象。市町村長が面接して適性をみるほか、
地域の病院や福祉施設などで数日間実習して論文を書いたうえで大学関係者が
面接、大学入試センター試験の成績も加味して合否を決める。合格者には卒業
後、郷里などで勤めれば返さなくてよい奨学金が用意される。

 初年度は10人が応募し、定員(5人)を超える6人が合格。益田順一学部
長は「告知期間も短く、どれだけ応募があるか不安だったが、地域医療への熱
意があって、学力もある学生が集まった」と話す。

 市町村合併で、市域が広がった旧浜田市と旧江津市も同法の指定地域となっ
たことから、07年度入試は地域枠の対象になり、定員も倍の「10人以内」
に。既に数人が春休みに地域での実習を始めており、益田学部長は「20人前
後、受験してくれれば」と期待する。

 一方、市町村長の面接などで地域が人選にかかわるようになったことで、こ
れまでは「医師派遣を」と要望する側だった自治体の担当者らも、大学などと
共に医師を育てるという考え方に変わりつつあるという。

 同学部では今年度、学生に地域医療への関心を高めてもらうために、6年生
全員に3週間程度の地域病院での実習を義務づける。隠岐諸島や益田市などの
38病院・診療所が学生向けのカリキュラムを用意して受け入れる予定。

 益田学部長は「学生は過疎地医療を嫌がっているのではなく、知らないだけ。
意欲に燃えて入学する学生のために、大学も地域での教育体制を整えたい」と
話している。