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『高知新聞』2006年4月6日付

郡部の医師確保へ奨学金 県国保連が制度再開


 県内の地域医療を担う医師の確保へ、県国民健康保険団体連合会(理事長=
松本憲治安芸市長)は18年度から、大学卒業後に郡部やへき地の診療所や病
院に勤務する医学生への奨学金制度を“復活”させた。県の補助を受けて実施
していた同様の制度を応募者の少なさなどから15年度末でいったん廃止して
いたが、深刻化する医師不足を背景に制度再開に踏み切った。

 近年の医師不足は、新人医師に2年間の研修を義務付けた「臨床研修制度」
が要因。研修医不足に陥った大学医局が地方に派遣した医師を呼び戻す傾向が
強まり、県国保連や県内の市町村が運営する医療機関(計29施設)のうち、
四万十市民、高北、仁淀の各病院では医師が定員割れに。三原村診療所は3月
末で常勤医師との契約が切れ、非常勤医師による対応を強いられている。

 再開する奨学金制度は、国立大相当の入学金・授業料の全額と生活費(月額
5万円)、図書購入費(同2万円)を医学生に貸与。卒業後、郡部やへき地の
指定医療機関で奨学金を受けた期間の1・5倍(6年受給なら9年)勤務すれ
ば、返済が全額免除される。大学や出身地は問わない。

 18年度は学生2人分(計約350万円)の奨学金支給を見込んでおり、県
国保連が半額、関係医療機関のある14市町村がそれぞれ12万円余りを負担
する。

 ただ、県国保連が10―15年度に県から半額補助を受けて同様の制度を実
施した際にはわずか5人の応募にとどまり、うち2人は在学中に専門医療を志
向して奨学金を返納。14、15年度には応募者がいなかったため県が補助金
を打ち切った経緯がある。

 このため県国保連も見通しの厳しさは認識しているが、「地域の医療サービ
スが消滅しかねない現状に手をこまねいてはいられない」と危機意識を強調。
今後、全国の医学生や進路決定前の高校生向けにアピールし、地域医療に志を
持つ人材を掘り起こす考えだ。