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『しんぶん赤旗』主張 2006年4月5日付

「行革」法案
くらし守る行政の責任放棄


 小泉内閣が今国会の最重要法案と位置づけている「行政改革」推進法案の審
議が、衆院の特別委員会で始まりました。

 行革推進法案は、国と地方の公務員の大幅削減を通じて行政サービスを切り
捨て、中小企業向け政策金融を縮小するなど、くらしと営業にとって重大な内
容を持っています。

 審議の中で中馬行革担当相は、法案に盛り込まれた公務員削減について「一
律にカットしようというのではない」とのべ、必ずしも行政サービスの後退に
はつながらないかのように答弁しました。

 これは大きなごまかしです。

官も民もサービス低下

 法案は従来とは、けた違いの大幅な公務員削減を掲げています。

 国家公務員の削減の標的は国民生活に密接な出先機関です。出先機関とは、
例えば労基署や公共職業安定所、食品安全の検査体制です。不安定雇用や劣悪
な労働環境が拡大し、食品安全への不安が強まっているもとで、これらの機関
は、ますます重要になっています。いのちと安全に深くかかわる気象台や海上
保安本部も削減の対象です。

 こうした行政サービスを後退させてはいけません。

 法案は地方公務員の削減について、「地方公務員の配置に関し国が定める基
準を見直す」と明記しています。行革相が答弁したように国が基準を定めてい
る対象は教育、警察、消防、福祉関係の地方公務員であり、まさに国民生活に
直結した分野です。約三百万人の地方公務員のうち、二百万人が該当します。

 小中学校の教員、警察官、消防士、保健所、保育士、児童福祉司などは、す
べて国が法律・政省令で配置基準を決めています。くらしと安全に直結する分
野を守るのは憲法にもとづく国の基本的な責任だからです。配置基準は、その
責任を果たすための最低限の基準です。

 ところが現実には、消防職員が基準の75・5%にとどまり、五万人も不足
しているなど、最低基準も守られていません。ここ数年、地震や台風、大雨に
よる深刻な被害が続いています。近い将来に東海・東南海・南海地震が連動し
て起こる可能性があると国も言っています。消防力の強化は急務です。

 行革推進法案は、まだ達成できていない基準さえ切り下げて公共サービスを
破壊しようとしています。

 小泉首相は「基準を設けなくてもサービスができる。公務員でなくてはいけ
ないのか」と答弁しました。

 公務員がやらなくても、民間がやるから大丈夫という議論です。

 しかし、三日の衆院行革特別委員会で日本共産党が指摘したように、保育士
などは官も民も同じ配置基準です。国の基準の切り下げは、官だけでなく民間
のサービスの質を落とすことになります。

国際的にも低い水準

 日本の公務員数は、人口当たりで比較すると諸外国よりも少ない「小さな政
府」です。国と地方の公務員人件費は、GDP(国内総生産)比で見るとOE
CD(経済協力開発機構)で最低、アメリカの三分の二の水準です。

 欧米では少人数学級が当たり前なのに日本の国基準は「四十人」学級のまま
です。このような行政サービスの格差が数字に反映しています。

 行政改革とは本来、無駄な公共事業をやめ、天下りや談合を一掃してくらし
を守るサービスを充実させることです。これに逆行する小泉内閣の行革は、改
革の名に値しません。