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『中国新聞』社説 2006年4月4日付

行革推進法案 納得できる道筋を示せ


 小泉内閣が「改革の総仕上げ」と位置付ける行政改革推進法案など関連五法
案の実質審議が、衆院行政改革特別委員会で始まった。財政事情を見る限り行
革は避けて通れまい。しかし法案は行政の将来像を明確に示していない。論戦
でどこまで具体化するか。注目する国民は多いはずだが、きのうの総括質疑は
欲求不満が募った。

 「簡素で効率的な政府」を目指す法案は、国家公務員の5%以上削減のほか、
政府系金融機関の統廃合、特別会計の整理合理化などを盛り込んでいる。ただ
し制度設計はこれからである。頑強な抵抗が予想される官僚をどう抑えるかも
課題である。踏み込んだ議論を聞きたい。

 小泉純一郎首相は、天下りにつながる公務員の早期退職勧奨について「でき
れば定年まで働けるようにするのが、あるべき望ましい姿だ」と、廃止へ向け
た考えを示した。防衛施設庁の「官製談合」事件で天下りが談合の温床となっ
た実態が浮き彫りになっただけに、見直しは当然だろう。

 一方で公務員の削減は「各省庁一律に減らすということではない」として、
警察など「安全」にかかわる分野は増員が必要との認識を示した。それでいて
削減の手順にまで大きくは踏み込まなかった。二月下旬には先行八分野の削減
計画で、法務省などがゼロ回答を出している。このままでは行革の骨抜きにつ
ながりかねない。

 国が進めるさまざまな事業を引き続き国が担うか、民間に任せるか、といっ
た仕分けも行革の根幹である。しかし政府は「大枠で国民の了解を得てから進
める」などと答えただけだった。

 これでどれだけ実のある改革になるのか。心もとなさを感じた国民は多いは
ずだ。

 永田寿康衆院議員の偽メール問題で国会が空転に陥ってから一カ月半ぶりの
論戦である。民主党の前原誠司代表は、郵政改革の自慢話を繰り返す小泉首相
を「壊れたレコード」、菅直人元代表は、小泉内閣五年の実績を「粉飾決算」
と皮肉った。しかし、もっと実効が期待できそうな対案を示す迫り方はできな
かったのか。

 九月退陣を表明している小泉首相にとって、法案は後継者の打ち出す路線に
改革の枠をはめる狙いもある。しかし国民は、小泉首相に改革を白紙委任して
いるわけではない。増税などの痛みも強いられてきた。まず国民が納得できる
内容を示さなければならない。