新首都圏ネットワーク
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『朝日新聞』2006年3月24日付夕刊

総合科技会議 真価問われる束ね役
第3期計画 省庁の壁課題


 4月に始まる第3期科学技術基本計画(06〜10年度)は、基礎研究を充
実させる一方、政策課題を実現する応用研究については、絞り込んだ課題に予
算をつける「選択と集中」の方針で臨む。だが、成果を社会に還元したり、人
材を育てたりするには、さまざまな制度の壁を越えねばならない。省庁を束ね
る総合科学技術会議の指導力が計画実現のかぎを握る。

 22日の本会議で62課題の「戦略重点科学技術」が決まった。ナノ、バイ
オ、IT、環境を重点4分野とした第2期計画から方針を変え、「脳・免疫系の
解明」「ロボット技術」「犯罪防止・操作支援技術」など実現すべき課題別に
絞り込んだ。「社会への成果還元」という第3期計画の理念を反映させるため
だ。

 政策課題対応型研究費全体に占める62課題の予算の割合(06年度は16
%)を今後5年間でできる限り増やす=グラフ。

科学技術予算における戦略重点科学技術の位置づけ
06年度科学技術関係予算3兆5733億円
基礎研究 1兆4223億円(科学研究費補助金、国立大学の運営費交付金など)
戦略重点科学技術 2920億円
政策課題対応型研究費 1兆7856億円
人材育成、産学官連携など 3654億円

有望な技術を優先して育て、市場を作り出したり、医療技術や創薬を臨床応用
するなど社会への成果の還元を目指す。

 だが、制度の壁は厚い。研究成果が出てから承認まで10年はかかると言わ
れる新薬の治験制度、人材の流動化や外国人研究者の在留に絡む労働行政、入
国管理などを同会議は「制度・運用面の隘路」の例に挙げた。

 同日、阿部博之・前東北大学学長ら同会議の有識者議員8名が連名で「骨太
の方針」を発表した。隘路を乗り越える具体策を各省に求める内容だ。

 「有識者議員自らが発案する経済財政諮問会議を参考にした初めての試み」
(事務局)という。だが、省庁と民間の寄せ集めで手薄な事務局態勢をどうす
るかなど、同会議の具体的な改革論議はこれからだ。(嘉幡久敬)