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『サンデー山口』2006年3月22日付

山大・県大 次期学長に聞く―生き残りかかる法人化―


 06年度、市内二つの大学の学長が変わる。山口大は、独立行政法人化後初の
学長選で選ばれた同大副学長の丸本卓哉氏(63)。一方、4月に法人化する県
立大の初代理事長兼学長には、県立総合医療センター院長・江里健輔氏(67)
の就任が決まっている。少子化に伴う全入時代を前に、厳しい局面に立つ地方
大学。今後の運営に対する抱負を、両学長予定者に聞いた。

教育重視でゼネラリスト育成
山口大・丸本卓哉氏

 北九州市出身。九州大大学院農学研究科博士課程を72年に修了。翌年山口大
農学部に着任し、助教授、教授、学部長を経て、02年から副学長を務める。同
大教育機構長も兼任。専門は土壌生科学と土壌微生物学。

 学長選挙に立候補し、一騎打ちとなった現職の加藤紘氏を約200票上回る
574票を獲得。選挙結果を踏まえ最終決定がなされる学長選考会議でも全会
一致で選ばれた。農学部、また吉田キャンパスからの学長選出は、山口大始まっ
て以来初めてのこと。任期は5月16日から約4年間。

−立候補の理由は

 法人化に伴う混乱がなかなか整理されず教職員の仕事量が増大、研究費も1
人約15万円と大幅に削減されるなど、このままでは大学の活力が低下します。
さらなる外部資金の獲得で財政基盤を確保するとともに、大学の将来ビジョン
を明確にし、大学運営や教育・研究環境を立て直します。

−山口大の将来ビジョンとは

 活力と人間力に富んだバイタリティーあふれる人材を育成する大学=「学生
中心の教育重視−共育できる山口大学」です。これまでの大学は研究に重きが
置かれていましたが、「教育」とりわけ学生も教官も共に育つ「共育」に重点
を置きたい。スペシャリスト(専門家)は大学院で、大学はゼネラリスト(広
範囲な知識・技術・経験を持つ人)を育成する場との観点に立ち、社会で活躍
できる人材を輩出したいと考えます。

−地域とのつながりは

 地元になくてはならない基幹総合大学として、地域社会との協力関係を一層
深め、文化的、技術的発展に貢献したい。産学官連携はもとより、4月には一
般市民が学生と一緒に講義を受けられる「開放授業」をスタートさせます。ま
た、地域貢献に意欲的な人材を安定確保し、県外流出を抑えるため、07年度入
試から医学部に将来地元での医療活動を希望する10人の特別枠を新設します。

地域に必要とされる貢献大学へ
県立大・江里健輔氏

 長門市生まれ。64年に県立医科大(現山口大医学部)を卒業。同部助教授、
教授を経て97年、医学部附属病院長に就任。01年から県立中央病院(現同セン
ター)院長を務める。心臓血管外科学が専門。

 山口大医学部教官として35年にわたって教育研究に携わり、大学経営にも精
通。同センター院長に着任後は病院経営を黒字転換させるなど、経営責任者と
しても優れた実績を持つ点などから適任とされた。4月1日に着任、2年間の
任期。

−法人化後の県立大が目指す姿は

 大学本来の機能「教育・研究」に今まで以上に力を入れたい。未来ある学生
に夢と希望を与えられる、またより質の高い教育を目指します。夢を持たせる
という観点では、方々で活躍されている県立大OBとの連携も考えています。
諸先輩方の功績を知ることで、自信と誇りを持って学びを深めてもらいたい。

−今後は自立的な経営努力が求められるが

 質を高めるにはそれなりの経費も発生します。しかしながら研究費の削減は
考えておらず、経営面では外部資金の獲得に主眼を置きたいと思います。国や
自治体、企業との連携研究、共同プロジェクトの推進など、さまざまなケース
が考えられる。各教官が高い意識と能力で研究に臨むことで、資金確保、大学
の質の向上にもつながるはずです。そのためにも、教職員の意識改革にまず着
手する必要があるでしょう。また、8月の認証取得を目指している環境経営シ
ステム「エコアクション21」への取り組みも積極的に進め、大学経営の効率化
に努めます。

−県立大が地域に果たす役割は

 地域の専門研究機関として、県や市町村のプロジェクトも参画していきたい。
県立大は学生、地域社会、県民に信頼され、必要とされる大学でなければなり
ません。積極的に地域に出て、貢献活動を進めたい。