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不利益変更の決定権は労働者側にある!

he-forum 各位         3/22/06

        山形大学職員組合書記長 品川敦紀

全国の国立大学における大幅賃下げの給与改定をめぐる闘いはいよいよ山場となっている
かと存じますが、常々気になっていることを一つ申し述べさせていただきます。

それは、大学執行部は当然ですが、組合側の中にも、まだまだ公務員時代の意識が抜け切
れて無いのではないかということです。

大学側が人事院勧告に従ってだしてきた大幅賃下げ提案に対し、組合側は、当然反対はす
るものの「組合がどう反対しても、大学側はどうせ押し通してくるのだろう。」と、国家
公務員時代の上意下達の習慣から抜け出せず、あるいは、組合組織率の低さで自信を持ち
きれず、半ばあきらめた雰囲気があるのではないかということです。

それが、多くの組合で使われている「大幅賃下げ、給与改定反対」とか「給与改定反対署
名」、あるいは「給与改定反体請願署名」などの表現に現れているように思えます。

全大教自体がそのような表現を使っていますので、単組で誤った使い方をされているのも
仕方ないように思いますが、これは、大きな間違いです。

今回の人事院勧告に従っての給与の大幅引き下げ提案は、就業規則の不利益変更であり、
従業員(教職員)の同意がなければ一方的に実施できません。もし一方的に実施すれば、
労働基準法違反(労働条件の明示義務違反他)となり、明らかな違法行為となります。

現在有効な就業規則(給与規を含む)に記載されている賃金、手当や昇給、昇格制度、退
職金の算定基準などは、すべて現在の従業員(教職員)が、使用者(学長)とかわした労
働契約の一部であって従業員が保持している権利なのです。使用者が新たに就業規則を作
成したり、就業規則を改定したいする事によって、一方的に従業員のこうした労働契約で
認められた権利を奪うことは、原則として許されません。

このことは、数々の判例でも繰り返し確認されていることで、どの労働基準監督署でも、
「一方的な不利益変更は原則として認められません」と指導しているところです。

一部例外的に認められる場合もあるというのが、いくつかの最高裁判例ですが、その場合
の判断基準が「高度の必要性に基づく合理性」の有無なのです。

今回の大幅賃下げ提案には、財政的にも、法的にも、その不利益変更を従業員が受認しな
ければならないほどの「高度の必要性」も「合理性」もないことは明らかですから、この
不利益変更の一方的実施は違法なのです。

したがいまして、私たち、労働者、組合が、大学側に給与引き下げをしないよう「お願い
」したり、「請願」したりすると言う立場にあるのではなく、大学側こそが、労基法違反
とならないよう労働者、組合に対し「賃下げに同意して下さい」と頭を下げなければなら
ない立場にあるのです。

つまり、賃下げ(不利益変更)実施の決定権は、大学側にではなく従業員(組合、教職員
)側にあるのです。

その意味で、組合側の対応としては、その大幅賃下げに同意しないのであれば、「大幅賃
下げ提案は認めません」とか「大幅賃下げ提案には同意しません」というのが正しいので
す。大学側に「反対ですから止めて下さい」とか「賃下げしないよう、お願いします」と
か言うような筋合いのことではないのです。

この点、各位に於かれましては、是非、確信をお持ちいただければと思います。いま、大
学側がやろうとしていることは違法行為なのです。組合は、その違法行為を認めないとい
う立場で頑張っていただければと存じます。

私たちは、かりに大学側が、こういった違法行為(一方的不利益変更)を行うならば、労
基法違反で労基署にも告発しますし、労使協定締結拒否の戦術も有効に使いつつ、大学側
の違法行為の撤回を求めるつもりです。

また、全組合員から就業規則の不利益変更に同意しない旨の「異議通知」を集め、大学側
に不同意の意思表明を行い、大学側が対応を改めなければ、訴訟も辞さないつもりです。