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『朝日新聞』2006年3月16日付

増税なければ? 財務省が地ならし試算


 増税せずに歳出削減だけで財政を健全化しようとしたら――。財務省が財政
制度等審議会(財務相の諮問機関)にそんな試算を報告した。国立大学の授業
料は4倍近くなり、災害時でも設備が足りない自衛隊が出動できず、取り締ま
りが手薄になって不法滞在外国人が増えるなど国民生活に大きな影響が出る、
という。増税の地ならしをしたい同省の意向が強くにじむ内容だ。

 小泉首相から「(歳出歳入改革で)国民がわかるようなきちんとしたものを」
と指示されてまとめたもので、近く経済財政諮問会議に報告する。同省は財政
再建をめざして過去にもこの種の試算をまとめたことがある。国民生活に与え
る影響を示し、国民に増税への理解を得ようという狙いからだ。

 この試算は11年度に国の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字
を達成し、15年度には対国内総生産(GDP)比で1.5%の黒字を確保す
るのに必要な歳出削減を試算した。名目成長率3%を前提にすると、15年度
時点で一般会計の歳出を約27兆円削減する必要が生じるという。これは経済
成長率並みに歳出が増えた場合に比べて3割の削減に当たる。

 これを達成するには、医療費の自己負担額は1.6倍となったり、年金の支
給開始が67歳まで引き上げられたりと国民の負担が大きくなるほか、防災や
教育、外交などにも影響が出ると指摘している。

 結局増税を受け入れるしかない、という論理を色濃く映し出した試算で、歳
出削減をせずに消費税の増税で財源をまかなうとすれば、11年度で6%増税、
15年度で11%増税が必要とまで試算している。