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『産経新聞』2006年3月10日付

行革推進法案を閣議決定 公務員削減など重点5項目


 政府は10日、小泉純一郎首相が推進してきた改革路線の総仕上げを目指し、
国家公務員の5%以上純減や政府系金融機関改革、特別会計の見直しなど重点
5項目を盛り込んだ「行政改革推進法案」を閣議決定し、国会に提出した。

 これを受け、政府の行政改革推進事務局は同日午後、政府系金融機関改革に
関し(1)貸付残高の対国内総生産(GDP)比半減(2)過去のアジア通貨
危機を念頭に置いた危機対応体制整備―を柱とする「詳細な制度設計に向けた
論点整理」骨子をまとめた。

 国家公務員純減の具体策を検討する政府の「行政減量・効率化有識者会議」
(座長・飯田亮セコム最高顧問)も同日、農林統計、食糧・森林管理を削減対
象分野とされた農水省に対するヒアリングを実施した。

 行革推進法案は「簡素で効率的な政府の実現」と理念を掲げ、改革工程や数
値目標を明記。9月の首相退陣後も「ポスト小泉」に継承を課し、改革路線の
後退を封じる狙いがある。与党は今国会の最重要法案と位置付け、衆参両院に
行政改革特別委員会を設置、早期成立に全力を挙げる。

 ただ、公務員純減の対象から刑務官が「公権力の行使」に当たっていること
を理由に除外されるなど省庁側の抵抗も強まっている。

 国家公務員純減では、2010年度末までに自衛官を含む国家公務員68万
7000人を5%以上純減、地方公務員にも4.6%以上の純減を求めた。国
民生活金融公庫など4つの政府系金融機関は08年度に1つに統合し、沖縄振
興開発金融公庫も12年度以降に移す。08年度には商工中金など2機関を完
全民営化する。

 現在31ある特別会計は、2分の1―3分の1に減らし、07年に「整理合
理化法案」(仮称)を国会に提出する。重点5項目はほかに独立行政法人の見
直しと国の資産・債務に関する改革。

 有識者会議は、農水省が農林統計と食糧管理の公務員削減についてゼロ回答
を示したため、再検討を求めた。

                  ◇

≪ゼロ回答続く公務員削減 天下り規制も課題≫

 行政改革の基本方針を定めた行革推進法案が10日、国会に提出され、今後
の焦点は改革の「各論」に移る。主な重点項目の課題をまとめた。

 【国家公務員5%純減】焦点は、自衛官や独立行政法人職員などを除いた中
央省庁などの公務員約33万2000人の取り扱い。政府の「行政減量・効率
化有識者会議」が15分野について各省庁への割り当てを検討し、6月に最終
案をまとめる方針だ。

 しかし、省庁側は早々と守りの態勢を固めている。先行8分野の削減計画の
提出期限となった2月下旬、法務省は行刑施設の刑務官などについて、受刑者
の増加や公権力行使に当たっていることを理由にゼロ回答。推進法案からも刑
務所長や刑務官らが純減対象から除かれた。農水、厚生労働、国土交通各省も
実質ゼロ回答だった。

 有識者会議は今後、残る7分野についても関係省庁に削減計画の提示を要請
するが、法務省と同様の「例外的措置」を求める意見が続出し、取りまとめが
ずれ込む可能性もある。このほか、純減対象職員を独立行政法人に移行させて
非公務員化するという"抜け道"を利用することも予想される。

 法案は能力、実績に基づく人事管理の早期導入も盛り込んだが、スト権を含
む労働基本権付与を求める公務員側組合との協議は難航している。

 【政府系金融機関改革】8つの政府系金融機関のうち、国民生活金融公庫や
国際協力銀行の国際金融部門など5つを統合し、2008年度に発足する新た
な政府系金融機関の役員ポストへの天下り規制も課題だ。

 現行5機関の役員数を合計すると48人で、うち省庁出身者は25人。最多
は財務省出身の12人だ。政府は天下りを全役員の半数以下に制限する方針だ
が、肝心の役員数をどこまで絞り込むかは決まっていない。

 また、商工中金は完全民営化すると明記されながら、経済産業省の強い反発
で、政府の関与を定める根拠法の廃止は盛り込まなかった。新機関の役員数や
商工中金改革の結論については、早ければ秋の臨時国会への法案提出を視野に
まとめる制度設計の内容がポイントになる。

 【特別会計見直し】05年度予算の歳出規模は重複分を除き205兆円余に
上る。現在31ある特別会計は、一般会計が中心となる国会審議のチェック機
能が働きにくいため、無駄遣いが横行しているとの指摘が絶えない。

 法案には、道路整備など5つの特会を08年度までに統合し、全体で45兆
円に上る剰余金や資産・負債を今後5年間で約20兆円圧縮、財政健全化に役
立てることが盛り込まれた。

 だが「見直しを検討」「独法化を検討」などとあいまいな表現にとどまった
特会も少なくない。天下り先の特殊法人などへの資金の流れが絶たれることを
嫌う省庁側が付け込むすきは残っている。政府は07年の整理合理化法案(仮
称)の国会提出を目指すが、スケジュール通りに統廃合が進む保証はない。