新首都圏ネットワーク
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『しんぶん赤旗』主張 2006年3月7日付

市場化テスト法案
「営利」はあっても「安全」欠く


 公共サービスの担い手を、民間に開放して競争入札で決めるという「市場化
テスト」法案が、国会に提出されています。

 競争入札による「不断の見直し」を通じ、行政が行う必要のないものは「廃
止する」(基本理念)としています。公共サービスを切り捨てる法案です。

公共サービス切り捨て

 法案は、行政機関と民間事業者の間で、また、民間事業者の間で競争を行い、
「質の維持向上と経費削減」を図る(趣旨)といいます。

 ムダをなくし効率的な行財政運営に努力することは、行政本来の仕事である
住民の福祉、行政サービスの充実のためにも当然求められることです。

 しかし、公共サービスの切り捨てを目的とするのでは、憲法と地方自治法の
精神に逆行します。

 憲法第二五条は「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及
び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と定めています。地方自
治法第一条二項は「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本とし
て」と明記しています。

 法案の基本理念や国、自治体、民間事業者の責務の、どこをさがしても「福
祉の増進」が出てきません。命と健康、安全を守るという基準もありません。
「競争」という言葉は百五十回以上(法案要綱)もでてくるというのに、です。

 しかも、国と自治体の責務の中に、国と自治体の「関与その他の規制を最小
限のものとする」と明記しています。

 福祉や安全という基準ももたず、行政の関与もなくしていく―。これでは、
民間企業の営利優先に歯止めをかけることができません。

 小泉内閣の「規制改革・民間開放推進会議」は、市場化テスト導入の目的が、
「民間のビジネスチャンスの拡大」にあるといっています。

 法案提出を前に実施された「市場化テスト」の試行で、ハローワークの事業
を落札した企業には、人材派遣企業が並びました。

 国民年金保険料の徴収業務では、流通最大手系のクレジット会社が100%
出資している企業が受託しています。規制改革・民間開放推進会議が、国民年
金保険料の徴収業務にあたり、「クレジットカードによる支払いの可能性を追
求」するよう、社会保険庁に意見を出しています。

 市場化テスト法案のねらいが、大企業のもうけのためにつくられていること
を示す一例です。

 公共サービスの改革は、住民のサービスの拡充をめざしておこなうべきであ
り、歳出削減や財界・大企業のもうけのためにおこなうべきではありません。

無法を監視する役割は

 公務員が担う公共サービスは、民間企業の横暴に苦しむ国民の権利を守るた
めの仕事を含んでいます。たとえば、中小企業への低すぎる単価の押し付けや、
サービス残業や派遣労働をめぐる無法にたいし、行政は、民間企業を指導する
役割を本来もっています。

 行政から監視を受ける立場の営利企業に、公共サービスを担わせたら、だれ
が利益優先の無法から住民の権利を守ってくれるのでしょうか。

 効率的な運営をめざすというなら、環境破壊で採算性もない大型公共事業に
メスをいれるべきです。

 財界のもうけを増やし、住民サービスを切り捨てる市場化テスト法案には反
対です。